「HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY」における「仲間」について

「HiGH&LOW THE MOVIE 2/END OF SKY」をすでに皆さん劇場で60回は観たと思います。嘘です。数回観た状態で私は、今回のEND OF SKYはパンフにあるとおり、まさしく山王連合の「青年期の終わり」の物語なのだと感じました。

序盤、SWORD連合のボスと主たるメンバーが集まった際に、テッツは言います。
「SWORDで揉めてる場合じゃない」
そしてロッキーがビジュアル系4人組を切ったと聞いて、チハルはITOKANでこう非難するのです。
「仲間切るなんてありえないっすよ」

それらは、今まで山王連合会がMUGENの後継として特に大きなトラブルもなく、うまく機能していたからこそ、出てくる言葉でした。
しかし、九龍の機密が保存されたUSBによって、カジノ計画が中止になると困るということに、山王連合会の一部のメンバーはようやく気づいてしまうのです。
商店街としては古臭くさびれていく街。そこで商売をする者にとっては、SWORD地区にカジノができることにより外部からお客が流入し、景気がよくなるのではという期待はどうしても抱いてしまいます。当然のことです。

そして、その現実を彼らは「リーダーであるコブラ」に突き付けてしまう。冷静に考えて、コブラに商店街の活性化を促せるかどうかなんて、一目瞭然、無理な話です。しかし、山王連合会でずっとコブラと「同じ目的(街を守る)」のもと、一緒に過ごしてきた彼らにとって、それは当然の要求なのです。
(いや無理だろ、ってのはおいて)
ダン、テッツ(およびチハル)にとっての「街を守る」は「自分たちの見える範囲を守る」であり、コブラにとっての「街を守る」は彼らとは違う。九龍という暴力団組織が街を跋扈することになり、なおかつ山王連合会がそれに手出し出来ない状況が正しいのかどうか。

そこで、敵役であるジェシーのタトゥー《Eat to live, and not live to eat》 が、カジノ計画を受け入れた山王商店街に突き付けられるであろう現実なのが皮肉な話です。
(これすごいよね)
生きるために食べろ、食べるために生きるな。
コブラも訴えますよね。今は苦しくても、九龍を受け入れたらダメになる。
でもダンたちは「食べるために生きる」ことを選びたいと主張する。
そこで彼らは決裂してしまうのです。

その決裂の場面に重なるのが、蘭丸の台詞です。
「しょせん仲間なんて、自分のことしか考えてねぇ」
だから蘭丸は「仲間」を使い捨てるし、自分のゲームの駒として有能かどうかしか興味がない。蘭丸のことを想ってくれる人間などいないのだ、という前提で生きているから。
(高野と平井がそれでも蘭丸に対して信頼をおいているのが救いなのだけど、蘭丸はEOS時点では理解していない)
実際、仲良くやってきた山王連合会から、離反する人間が出ます。「自分の事情」に対してコブラが動いてくれないという理由で。なのに、協定を受け入れないロッキーのためにコブラは動く。それは「(ダンにとっての)仲間じゃない」から、だから離れる。

ノボルに対しての反感もダンは吐露しますが、私はコブラ/ヤマト/ノボルは「仲間」じゃないと思っています。彼らは「友達」なんですよね、最初から。だから特別なのは仕方ないし、その「友達」に「仲間」だと割り込めないとダンはどこかで理解している。その疎外感も手伝って、SWORD全体のために動こうとしているコブラとのズレが大きくなっていく。

ただ、コブラは彼らが「山王商店街のためには動く」ことを信じている。だから「一緒にいるだけが仲間じゃない」と断言したのではないでしょうか。道が分かれても、離れても、同じ目的を有するものは「仲間」です。一緒にロッキーを助けに行かなくても、彼らは彼らで自分にできることをするだろう。それがコブラの「仲間」への信頼です。

コブラに対してロッキーが告げた、「人はすぐ誰かに頼ろうとする、それではいけない」という覚悟。それは頭としての矜持と、White Rascalsというチームが「他のチームに頼らずに立ててこそ、彼らの仲間となる資格がある」という意思表示です。コブラは協定を言い出したけれど、そこまでの覚悟が自分に、そして山王連合会にあっただろうか、とあの時に考えたのではないでしょうか。

最後に九龍の善信が言う「人並以下の連中が、仲間とつるんで、人並み以上になったつもりで」は、「仲間」であることの意味を理解していないからこそ出てくる台詞ではないでしょうか。群れてるだけが仲間だと彼は思っている。

コブラたちはドラマから、ミクロな視点での「仲間」で動いていた。
EOSの「SWORD協定」で「仲間」はマクロなものに進化しました。対する敵も強大な存在となりました。

これがFINAL MISSIOINで、どんな「仲間」たちに変化し、成長し、彼らは何をつかむのか、11月が楽しみでなりません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?