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マーケティング会社は何を売るべきか

マーケティングを生業とする会社は何を売り物にすべきなのでしょうか。

弊社はマーケティングを生業としている会社なのですが、結構悩ましいものです。

お客さんの要望を並べるとこんな感じ。

  1. バナーや動画などのクリエイティブを作ってほしい

  2. 広告媒体の運用をしてほしい

  3. 傾向分析してほしい

  4. 作業系を行なってほしい

  5. なんでもいいから安く広告を出してほしい

  6. 経営判断になるようなコンサルティングを行なってほしい

  7. 業界情報を教えてほしい

まだありそうですが、マジックナンバー7(人が一度に覚えられる数字の数が7つ説)で留めておきますね。

1のクリエイティブを作ってほしいに関しては、デザイン事務所とか制作会社の領域のように思われます。

2については広告代理店の領域。

3は大袈裟に言えばデータサイエンスの世界なのかな。

4はオペレーション会社、下請け業者の領域。

5は小さな代理店の領域。

6はコンサルティングファームの領域。

7はメディアの領域。

とまぁ、多岐にわたる範囲のご相談があります。そして厄介なことにマーケティングとはこれら全域をカバーしてしまう概念なんですよね。なんなら売り上げを上げてほしいという依頼までありますし。

じゃぁ、僕らのような零細企業がこれを全部やろう!そのために企業努力しよう!となるのか、っていうとそうはいきません。

予算も資産も人材もいないからです。選択と集中が必要。

どうやって選択するかが大変重要になるんですけど、ここは顧客視点で判断すべきでしょう。つまり、顧客が本当に求めているのはいったいなにか?

BtoBの場合、どんな会社も求めているのはコストの削減が売り上げの向上です。これを前提にします。

DXの流れからコストの削減、自動化はかなりの勢いで求められているところですが、これにはエンジニアリングが不可欠で、残念ながら弊社にはその力がございません。

ですので、売り上げの向上に貢献したいと思うのですが、これは約束できません。(コスト削減は約束しやすい)

ですので、売り上げというものを分解して考える必要があります。

売り上げ = 人数 × 単価 × 回数

このうち単価については、顧客側のコントロール範囲が大きく、我々が介入できる領域ではないことから、いったん外します。

そうすると、人数か回数が僕らに求めらていることと整理できます。

言い換えると、新規客の創出とリピーターへの育成という感じ。

新規客をさらに分解してみましょう。

顕在層と潜在層という言葉があります。

ある商品を欲しいと明確に思っている場合は顕在層です。
月見バーガー食べたい!とか、フリース欲しい!とかって感情ならばもはや顕在化していると言っていいでしょう。

ちなみに、月見バーガーもフリースも欲しいと思わされる企業努力が背景にあり、もともとは潜在的なものでした。

顕在層はポジティブ感情とネガティブ感情の二つに分かれると考えられます。

ポジティブ感情は、理想的な世界を想像しそこに近づきたいという気持ちです。
月見バーガーのCMをみて口に広がる記憶、それを食べている自分を想像すると幸せそうだ。だから食べたい、という感じです。

ネガティブ感情は、何かに困っていてそれを解決したいというケースです。
寒い!暖かくなりたい!でも重くはなりたくないし気軽に羽織れるもの、それはフリースという感じです。

いずれも「食べたい」「寒い」などのトリガーが必要で、トリガーを設置することが顕在層を呼び込むためのマーケティングと言えそうです。

潜在層は、本人さえ気がついてないことなので、もっと複雑です。
人間は90%が潜在意識なのだそうです。今日何回まばたきしたかわかる人はいないでしょう。まばたきは無意識的に行われているものの、必要な動作です。

脳には二つのシステムがあります。車の運転で説明を試みますね。
初めて車の運転をしたのは、教習所でした。日本の場合、皆さんがこれに従っていると思います。

初めての運転ですから、とにかく緊張し、いろいろなことに意識を張り巡らし、どっと疲れた記憶があります。こんなんで運転できるようになるのか不安でした。

この時、脳はシステム1を発動させて、事故らないようにいろいろな神経を意識的に働かせています。だからドット疲れるんですね。いかなるチャレンジもシステム1を通ります。

運転にだんだん慣れてくると、友達と話しながらとか歌を歌いながらとか、別のことも同時にできるようになってきます。体が覚えたという状態ですね。これがシステム2です。

つまり慣れていくると、無意識で動作できるように脳の負担を減らそうとするんです。負担が軽くなった脳は、友達話すことに意識を向けられるようになるんですね。

潜在意識の中にある多くのことは、もとは意識下にあったものということです。

まばたきもきっと生まれたばかりの頃は、どうやってやるのかいつのタイミングでやればいいのか、体が緊張していたと思われます。回数が多いのですぐ慣れただけではないかと。

そうやって人は、あらゆることに慣れ、潜在意識で生活しています。
マーケティングは、潜在意識に入り込み顕在化させることを考えなければならないでしょう。

潜在意識に入り込むにはどうしたらいいのでしょう。
無意識で過ごしている生活のなかで、何度も登場させることが有効です。

ザイオンス効果というのですが、何度も繰り返し触れると親しみが湧くそうです。

月見バーガーはよく考えてみると、どこか月なんでしょう。
黄身が月なんだろうなと思われますが、だとしたら白身は夜空を現す黒でなければいけないし、そもそも食べる時に見ることはありません。

違和感のある商品ですが、繰り返し繰り返し、月見バーガーのCMを見たせいか、違和感を感じることなく食べたくなります。これがザイオンス効果です。

顕在層と同じように、ポジティブ感情とネガティブ感情がありますが、どちらにせよ繰り返し繰り返しみせることが有効。マーケティング的アプローチはまさに繰り返し見せることになります。

整理してみると、新規顧客創出のマーケティングは、潜在層に繰り返し見せたあとに顕在層向けのトリガーを設置することになりますね。

ここまでうまく運べたとして、初めて購入してくれた人にもう一度買ってもらうように育成しなければなりません。育成という言葉が正しいとは思いませんが、便宜上失礼します。

商品には頻度があります。
歯磨き粉や洗剤やトイレットペーパーは無くなれば次を買わなければならず、エボークトセットと呼ばれる消費者のプレファレンス(好意度)によって選ばれた候補から再購入されます。

ラーメンとかハンバーガーも人によって違いますが、「食べたくなる時期」がありそのときに自社製品がエボークトセットに入っていることが重要です。

どうやって入るのかというと、プレファレンスを高める、要するに好意をもってもらえるようにする必要があるのですが、それは3つの要素で決まると言われています。(森岡毅氏の著書、確率思考の戦略論より)

  1. ブランド・エクイティー

  2. 価格

  3. 製品パフォーマンス

この3つです。ブランド・エクイティーはそのブランドが持つ魅力や約束みたいなものです。例えば、地球環境にやさしい商品であるとか、めちゃくちゃオシャレとかです。簡単にいうと。

価格はまんまで、製品パフォーマンスは機能や効能といったところでしょうか。

これら3つは、社内のコントロール範囲であるため、我々のような会社の範疇ではありません。プレファレンスが高いということを前提に、エボークトセットに入るように試み必要があるわけです。

先に挙げた、繰り返し見せる(伝える)は、その1手ですが、相手は一度購入している方です。少しアプローチを変えねばなりません。

すぐに思いつくのは、クーポンなどのインセンティブを感じてもらうことでしょう。何回もくるとお得というアプローチはプレファレンスが範囲外であっても出来ることです。

今の僕はそれしか思いつきません。。。

もう一度整理してみましょう。

繰り返し見せる → トリガーを設置 → インセンティブをちらつかせる

こういう事になりますね。
並べてみると、当然のことというか、当たり前ですね。笑

とはいえ、これがなかなかうまくいかないので、クライアントは先上げた方や7つの依頼の仕方をしてくるのです。

やっと本質的な課題が見えてきました。顧客が解決したいこと(顕在化している!?)は、「うまくいかせてくれ」です。

うまくいっていない、いっているということを把握するためには、定量化しデータで分析する必要があります。そうでないと、再現性が乏しくなるからです。

データで分析することはそれぞれのフェーズで異なる点はありますが、基本的には5W1Hでしょう。

・いつ知らせたのか
・どこで知らせたのか
・誰に知らせたのか
・何を知らせたのか
・なぜ知らせたのか
・どのように知らせたのか?

です。ネタティブとポジティブな感情があるので、2つの視点で分類してデータを集めるのがいいでしょう。

データを分析したくらいでは、うまく回らないので、マーケティングファネルやバタフライサーキットといったフレームワークを用いて、上記に挙げた3つのフェーズをさらに詳細にし、それぞれのフェーズで解決策はないかを講じるのがいいと思います。

個人的は、そのやり方で成功した例がいくつかあります。

こうやって整理してみると、我々は顧客を商品まで案内する、水先案内人ですね。商品ありきで語らなければならいのですが、もしかすると逆があってもいいかも。

顧客のために商品を探すマーケティング、キュレーターのような視点もありえますね。

BtoBにおいては、お客さん連れてきますね!とは必ずしもいえないので、お客さんのことを理解して連れてくる工夫をしますね!という他ないでしょう。

理解と工夫はデータで可視化されるべきであり、それこそがマーケティング会社が売るべきもののような気がします。

理解 = データ収集・加工・分析・レポーティング
工夫 = 3C分析、打ち手創出、シミュレーション、オペレーション

こういう感じっすね。
最初の一歩目は、「理解」であるはずです。
理解のためにあらゆるデータの集積の可視化が大事になります。

定量的に集められたデータやその後のアプローチは、資産となって積み上がるので、失敗の確率を減らす(僕が好きな考え方)ための大いなる価値になるでしょう。

以上!

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