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環境シミュレーション+アイデアを試せるパーツ=最強――ゲームの旅:Oxygen Not Included

幼少から、「いじる」遊びが好きでした。

働きアリの通り道に石を置いてみる。アリは迂回する。楽しい。
砂場遊びで水の通り道を作ってみる。水はそちらに流れる。楽しい。
焚き火に薪を、空気が通りやすいように焚べてみる。薪はよく燃える。楽しい。

「系」に干渉して、その作用を観察する、ということを、幼少から今に至るまで、好きでやっている気がします。

仕事でも、チームでの働き方の改善とかを考える時は、そういう快楽を背景としていると思います。
なんだったら、Twitterのつぶやきだって、「このTLにこの内容を投げ込んだたどうなる?」という気持ちでやっていたりします。

GWを含む5月ほぼまるごと、150時間かけて遊んだ「Oxygen Not Included」は、まさにそのような、「いじる」楽しさに満ち溢れたゲームです。
実はまだ(1回目のプレーを)クリアできていないのですが、6月には別のゲームで遊ぶ予定があるので、今の時点での感想を、内容紹介を交えつつ、まとめてみます。

惑星を「いじる」

本作は「コロニーシム」と呼ばれるジャンルのゲームです。街づくりにも近いですが、その場にある資源で生き残っていき、自分たちの領域を広げて行くために頭を使うのが楽しい、というようなものです。わかりやすい説明はChatGPTくんにおまかせして、楽しかったことの話をしていきます。

開拓していくのは、土があり、水があり、動植物がいる、巨大な洞窟のような空間です。公式のゲーム紹介では岩石(rock)と表現されていますが、掘り進めると油田やらマグマやらまで出てくるので、惑星と表現してしまっても差し支えない、それくらい豊かで色んなものが詰まっています。

この動画は私のプレーのタイムラプスですが、見ての通り、惑星は無数の小空間に分かれています。その真中くらいからスタートして、上下左右、様々な種類の空間に掘り進み、資源を獲得して、生き延びていきます。

複製人間すぐ死ぬ

本作で「生き延びる」役割を果たすのは、「複製人間」です。

うちの採掘&建築係、ジーンくん。左に見切れてるのは農耕係のニコラくん。

ゲームが開始する惑星中央の小空間に、なぞの製造マシンがあり、そこから複製人間を製造することができます。最初に3人、以降3日ごとに1人。複製人間以外のものの製造を選ぶこともできます。

この複製人間たちは、さながらドラえもんのひみつ道具のような便利ツールを持っていて、洞窟を掘り進んだり、部屋を建てたり、農作物を育てたりと、様々なことができます。役割と作業優先度を指定して、あとは放っておいたら作業をしてくれます。

しかし、この複製人間たちは、とても良く死にます。どうやって死ぬかというと、

  • ご飯が食べられなかったら死ぬ

  • 酸素が吸えなかったら死ぬ

  • 火傷で死ぬ

  • 動物から攻撃されると死ぬ

といった感じです。

ご飯が食べられなかったら死ぬ

複製人間は1日に1000kcal消費すると決まっており、体内に溜めているカロリーが0になったら死にます。

カロリーは食事をすることで補充できますが、そのための料理は作る必要があります。最も簡単なものは土と水から作れますし、農作物を育てて刈り取って調理して食べる、動物を捕らえて飼育して繁殖させて殺して食べる、といったこともできるようになります。

酸素が吸えなかったら死ぬ

なんのこっちゃって感じですけど、本作はタイトルが示す通り酸素はどこにでもあるものではありません。隣の空間まで開通したらそこは二酸化炭素だらけだった!みたいな事がよくあります。複製人間は一定時間のあいだ息を止めることができるので、全く作業できないわけではありませんが、それでも時折酸素がある場所での呼吸が必要です。

複製人間たちは空間の酸素を消費するので、呼吸ができる場所は何も対処しなかったらどんどん減っていきます。水を電気分解したり、緑藻から酸素を取り出したりして酸素を確保しますが、それでも、惑星の奥地まで採掘に行ったら、息切れして、帰ってくる前に窒息死、という事もあります。ゲームが進むと酸素マスクや宇宙服を作って持たせる事ができ、危険は小さくなっていきます。

実際どうやって死んだか

こうして文字にしてみると、別にちゃんとやれば死ななさそうに見えます。しかし私は実際、

これだけの数の複製人間を死なせてしまいました(死体は病原菌を撒き散らすので、墓に埋葬してあげる必要がある)。一例を挙げると、

  • 5人分の食料しか生産できないのに複製人間を7人に増やしてしまった

  • 畑を作ったところが二酸化炭素に埋まってしまい行けなくなった

  • 酸素生産のための作業に追われて農作業に手が回らなくなった

というような原因です。安定させるまではすごく大変でしたが、後述するように、本作にはこういった問題を解決するための方法がたくさん用意されていました。

「全部最優先」が駄目、というリアリティ

こんなところで仕事の勉強ですよ・・・

設備を使ってみたら、アイデアが浮かぶ

私がこのゲームで一番脳汁が出た瞬間を紹介します。

本作では、複製人間たちを研究に従事させることができて、従事させた時間に応じて、建てられる施設が増えます。

電気で動く吸水ポンプは、その最初のほうで作れるようになる設備で、これと液体パイプと排水口を設置して複製人間たちの寝床の近くまで水を汲み上げて、酸素があるところで水を補充できるようにしました。この作業の時、食料の生産は2-3人分しかできておらず、どんどん人が死ぬのを3日に1回の人間製造で補充しながら、システムの完成が先か俺たちの全滅が先かという勝負をしながら作業を行ったのです。完成して、食料環境が劇的に改善したときの脳汁の出方たるや。

全部で300種類くらいある本作の設備は、どんどん新しいものが建てられるようになりますが、多すぎて最初は何に使えるのかもよくわからないまま放置してしまいました。しかし、例えば吸水ポンプなら、一度建ててみて、

  • 液体のある場所に設置する

  • 液体パイプを差し込む

  • 電線を設置して送電すると動く

  • その場の液体を吸ってパイプに流し込む

というような性質を理解すると、「これ、今抱えている問題の解決に、こういう使い方で使えるのでは!?」という事が思いつけるようになりました。

設備を組み合わせて使うので、アイデアはその2乗3乗といった形で溢れていきます。例えば今やっているのは、

  • 「吸水ポンプ」で真水を汲み上げる

  • 「炭素スキマー」で真水を使って二酸化炭素を吸収して、汚染水を排出する

  • 「浄水機」で砂を使って汚染水を真水に戻して、汚染土を排出する

  • 「堆肥置き場」で汚染土を土に変換する

という形で、二酸化炭素を減らして土を作る、というものだったりします。

環境シミュレーション+アイデアを試せるパーツ=最強

ここまでに本作の遊びを一部紹介しましたが、書ききれてない事が他に、

  • 何で発電をしてどこにどうやって配電するのか

  • 病気にかかると性能が落ちる複製人間を、どうやって病原菌から遠ざけるか

  • 各施設が生み出す熱量によって進む温暖化にどう向き合うか

    • 気温30度を超えると育たなくなる農作物、そして人間は死ぬ

  • 惑星のどこにもなくなってしまった資源をどうするか

    • 上記の土生産はその対策

などなどあり、様々な問題に立ち向かうアイデアに頭を楽しくひねらせる、そういう遊びが続きます。

本作は気体と流体のシミュレーションが入っていて、軽いものは上に、重いものは下に行きますし、熱のシミュレーションも入っていて、どこかで起きた熱が徐々に伝播していきます。こういったシミュレーションに対して、実際の現実では難しいような実験やアイデアの試行錯誤ができる事が、本作の面白さの核心だろうと思います。

また、複製人間が製造できたり、彼らの便利ツールは消耗することがなかったり、無限に蒸気が出る噴出口があったりと、適度なデフォルメによって、楽しさのツボを突くバランス取りがされているのが良いです。

初速の速さ=問題のサイズ感

最初は「腹をすかせてる!」とか「建築の資材が足りない!」とか小さい問題から始まって、それらを解いて気持ち良くなりつつ学習を進めていると、徐々に大きい問題が見えてくる、という流れになっているのが、遊び始めてすぐにドはまりしていった理由だったように思います。

発売されて6年くらい経っているゲームで、安い時は1000円以下で買えますが、自分にとってはフルプライスの作品数本分くらい楽しんでるゲームとなっています。気になったら手にとって見てください!

おまけ:佐渡の金山でひっくり返った話


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