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(ネタバレあり)ソシャゲの定石を破る挑戦――ゲームの旅:ヘブンバーンズレッド(4章後半まで)

あなたはソシャゲの編成画面で泣いた事はありますか?
私はさっき泣きました。

昨年2月から運営されている「ヘブンバーンズレッド」(ヘブバン)は、基本的には典型的なソシャゲ≒キャラガチャ式運営型スマホゲーム(宇宙からの侵略者と戦う)ですが、一部その定石と言えるフォーマットから外れた手法を取っており、それが(うまく行っているところとそうでない所が見えるけど)プレイヤーの感情を動かす鍵の1つとなっているように思えます。

先程、最新のメインシナリオである4章後半をクリアし、また涙腺が緩んでしまったので、常々書こうと思っていた本作の挑戦について、書きまとめてみます。

ネタバレについては、ここは何章までのネタバレをする、と明記するので、読みたくない人はそこで止めてもらうのが良いかと思います。

先に免責ですが、ソシャゲは沢山あるし1つ遊ぶのに必要な時間が多く、私が遊んだ数も別段多いわけではなく、遊んでないタイトルの事はわかりません。このタイトルではこうだった、みたいな話があれば、記事に書いて教えてください。喜んで読みます。


本稿でしない話

「一見したキャラ付けの濃さと弾けたボケツッコミ会話劇でキャラになじませた所でストーリーの起伏を叩き込んでエモくさせる(音楽がそれを補助する)」「食う、風呂、寝るとかの生理的な行動の描写でキャラに実体感を持たせる」とかの麻枝准メソッドの話をしても良いのですが、それはもう20年の間に散々語られたと思うのでしません。エロゲーはやっておらず、Angel Beats!とCharlotteくらいしか知らないし。

また、「攻撃力ー防御力の引き算にバフを掛け算していくダメージ計算」を軸とした戦闘コンテンツの運営も、手練感があって面白いのですが、その話もしません。

定石1:シナリオでの選択肢は意味を持たない

他のタイトル:「ボタンを押す」事の意味

ソシャゲのシナリオパートでは、以下のような選択肢を選ぶことがあります。

これは選んでいるとは言わないのでは

FGOでメジャーになった、ほぼ意味がないけど選んでボタンを押すセリフです。
意味のない選択ですし、なんだったら一択のときもあるんですけど、ボタンを押す行為が「自分がそのセリフを言ってる感」の演出になる、という効果があります。

これを採用したタイトルは結構あって、私が遊んだものでもプリコネとブルアカはそうでした。

このように、普段ボタンを押している事を利用した演出が発明されたり、意味がないように感じられることを逆手にとったシナリオのトリックがたまに出てきたりもします。

一方、この「自分がそのセリフを言ってる感」がきつく感じる事もあります。私の場合はブルアカではそうなる事が多く、立派で政治力の高い人物である主人公「先生」のセリフのボタンを押すたびに、立派でない自分との乖離をきつく感じていました。

ヘブバン:選択肢の復権

このように、意味がないことに意味がある、といった感じの選択肢ボタンですが、本作では、この選択肢に意味を持たせる試みがなされています。

映画ネタも結構多い

まず前提として、ヘブバンの主人公(かやもりるか・画像左)は、FGO・プリコネ・ブルアカの主人公と異なり、とても良く喋ります。ドラクエやポケモンではなくFFの主人公っぽいです。外見は美少女天才ロッカーだが、喋りは高田純次。その適当さで癖強なキャラたちと距離を縮めていきます。

ほっといてもどんどんボケツッコミ会話劇を生み出す主人公ですが、たまに選択肢が出てきます。

ボケるか、ボケないか

一番多いのは上記のような選択肢ですが、ここに1つ驚きがあって、それは「ボケなかったら、おまえそんなキャラだっけ?という反応が返ってくること」です。

これは一見すると、「自分がここまでに選んだ選択肢をキャラが(ゲームが)覚えている」ように見えて、衝撃を受けました。あとで確認したら、ボケない選択肢を選んでも話の流れでボケていたり、マジシャンズセレクトのような、どちらを選んでも当たりに感じられるように手法が用いられているようでした(それはそれでうまい)。

こういった選択肢の中で、本作では選択次第でゲームオーバーになる箇所が登場します。
エロゲーなどのビジュアルノベルでは選択肢を間違ってバッドエンドになることは良くありますが、前述の通りソシャゲでは体験した事がありませんでした。
本作はメインシナリオの進行にはいわゆるスタミナ、実時間で回復する資源を必要としないようになっており、話を遡ってプレイする事も簡単にできます。それらの工夫の結果として、問題なくゲームオーバー≒バッドエンドを実装することができるのです。

残念なことに、最近のメインシナリオでは選択肢でのゲームオーバーは実装されていません。今後の更新に期待です。

定石2:駒になるキャラは物語中でいなくなることはない

ソシャゲにとって、プレイアブル≒駒になるキャラは商材です。日々の運営の中で、キャラの新しいバージョンをガチャに出して、プレイヤーがお金を出して回してくれる事を期待する、という商売です。

なので、駒になるキャラがシナリオ上でいなくなる事はほとんどありません。シナリオからキャラがいなくなると、そのキャラを戦闘とかライブとかで(気持ち的に)使いにくくなるからです。

しかし、ヘブバンではこの定石を破り、シナリオ上でいなくなるキャラがいます。

2章

(ここから、2章の結末のネタバレを含みます)

ヘブバンは良く「2章まで遊んでくれ!」という言い方がされます。公式でもその方向で押しています。

このCMに出てくる蒼井というキャラは、2章のラストで、強大なボスの攻撃から他の仲間をかばって死にます。

この、駒になるキャラが死ぬ、という事は、私にとっては大きな衝撃でした。個人的には、アニメ「魔法少女まどかマギカ」の3話のマミさんのような、ジャンル外しの衝撃。当時(2章はリリース時点で遊べたので、リリース直後)のツイートを検索してみても、衝撃を受けた人は少なからずいたようです。

ソシャゲをある程度遊んでいる人であれば、「いなくならない」定石については知っているはずです。それは、生死をかけた戦いの物語であっても、例外ではありません。かつてグラブルで魅力的なキャラが死ぬ(プレイアブルにならなかった)イベントがあり物議を醸すという事があったりもしました。
キャラが死なないことは、物語の内容と照らして、不自然や不誠実に見えたとしても、そういうもの。プレイヤー(少なくとも私)は、そう思って遊んでいます。

その前提があっての、死。衝撃でした。

直前の戦闘で彼女を守る演出があって、それに勝ったあとだったこと、彼女に捨て身の行動を取らせたのが自分の言葉(選択肢で選んでる)だったことも衝撃を大きくさせました。

4章

(ここから、4章のネタバレを含みます)

本作の魅力に、ボケツッコミの弾けた会話劇というのがあります。

気になる

関西弁のツッコミ鋭い右のピンク髪のめぐみん、彼女は4章で一時的に離脱します。本作は宇宙からの侵略者と戦う部隊の物語ですが、戦意を喪失し、脱退して一般人になります。

本作のキャラは6人1組の小隊に所属しており、めぐみんと主人公は同じ31A部隊です。ゲーム的にも、戦闘には6人を編成して挑みます。

私は、この建付けなら、編成はストーリーに沿ったものにするのが良いだろうと判断し、ずっとそうして進めてきました。小隊で行動する事が多いメインシナリオは31Aのメンバーだけで攻略してきたという事です。
そこでめぐみんが離脱すると、メインシナリオの戦闘攻略を残りの5人で行う必要があります。
(後述しますが、実際は編成できないというわけではありません)

1人分の空白

離脱している期間は長く、その間にも強敵との戦闘は多々ありました。めぐみんは敵の防御力を下げることができたので、彼女がいないと戦闘が長引きました。めぐみんは小隊唯一の打属性で、彼女がいないために弱点を突けないという事もありました。

そんなめぐみんは、4章のクライマックスで、ちょっと出来すぎに思えるほどのシナリオ展開で、部隊に帰ってきます(それも味なんや)。4章のラストバトルで、彼女を編成に加える瞬間が、4章を遊んできた中で一番感情のこみ上げる瞬間だったのです。

キャラがいなくなっても成立する工夫:イベントシナリオでの再登板

先述の通り、ソシャゲの駒となるキャラには商材の側面があります。本作では、いなくなったキャラを商材として活用できる仕組みが用意されていて、それが運営を成立させる一助となっています。

1つ目は、イベントシナリオでの再登板です。

今月のシナリオは2章と3章の間

本作では毎月シナリオイベントが開催されますが、メインシナリオが4章まである中、多くのイベントはプレイ条件を1章ないしは2章のクリアとしており、シナリオ上の時系列もそのタイミングとして描かれます。

なので例えば3章や4章でいなくなるキャラも、イベントには概ね登場できます。また、2章後のイベントであっても、2章でいなくなるキャラが回想で登場する、ということもあります。

そして、この時にいなくなったキャラの新バージョンがガチャに出てくることがあります。このようにして、商材としては生かし続けているのです。

キャラがいなくなっても成立する工夫:ストーリー乖離アラート

いなくなったキャラの新バージョンが追加されても、この先のシナリオでは使えないのでは?という疑問が生まれますが、それをカバーするのが、2つ目の仕組みであるストーリー乖離アラートです。

本作ではシナリオの進行状況などに関わらずどのキャラでもいつでも編成に加える事ができます。なので、元々、ゲームシステム的には、「いなくなったキャラの新バージョンが追加」される事に問題はありません。
とはいえ、シナリオに魅力があるゲームで、シナリオと噛み合わない編成で戦うのは没入が削がれます(気にならない人、それはあなたの才能なので、大事にしてください)。

そのために、本作ではシナリオでの戦闘の編成画面では、「シナリオ的にその場にいるとおかしいキャラ」が編成されていると、「その編成、おかしいけど、良い?」と確認してくれます。気にならない人向けにはOFFにもできる親切設計です。

いなくなったキャラに限らず、別行動中と名言されている小隊のキャラなどもアラートを出してくれるので、しっかりこだわってシナリオ向けの編成にすることができます。

本作で日常的に触れる事になる、シナリオ外の戦闘コンテンツは、時系列から離れた場所にあるので、誰を出してもそれほど違和感はありません。なので、シナリオ編成重視であってもSS蒼井の使い所はあるわけです(捉え方次第だけど)。

違和感

ここまで述べたような挑戦をしている本作ですが、違和感を感じる点もあります。以下、雑多に述べます。

「戦闘」のシナリオとゲームの乖離

軍事作戦のシナリオが多い本作で、このような作戦を取る、と言いながら、やっていることがJRPGのダンジョン探索とコマンド式戦闘だということです。
今はアークナイツみたいなゲームもあるので必ずしもコマンド戦闘でないとガチャ軸のビジネスが成り立たないってことはないはずです。おそらく、難しくなりすぎないように、それと3Dキャラがど派手に動く必殺技の演出(売れる)を無理なく入れられるように、ここはそうなっているのだろう、と思っています。

度を超えて厳しい敵

シナリオ的にいるメンバーだけで挑むと厳しい耐性を持った敵が普通に出てきます。
いないから苦労している、も演出ですが、4章ではもともと敵がかなり強いこと、本作は属性の得意不得意が強く出るほう(倍以上の違いになる)があり、演出以上にストレスがきつく感じました。

面倒な操作

私は本作を主にPC(Steam)で遊んでいますが、キーボード&マウスだと操作が難しい箇所があり、最近増えています。
仕方ないのでコントローラー操作にすると画面上にボタンが出なくなり、マウスでは操作しづらくなります。優しくないなと思います。

今後

読み残したストーリーコンテンツを読んだら2周年(来年2月)くらいまで休もうと思ってます。
本作は休みやすい(毎月のイベントシナリオはその期間じゃなくてもいつでも読める)のも良いところです。

ソシャゲ全般に対して

年月をともにしたが故のエモがあるシナリオ運びができるのが運営型の強みですが、シナリオを読む事を目的と考えるとシナリオを読んでいない時間が長すぎてきついというのがあります。それゆえ、最近はあまりこの手のゲームについて積極的にはなってなく、今後さらにそうなりそうです。

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