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窮屈なゲームは悪いゲームか?――ゲームの旅:Diablo IV(シーズン1)

「全然悪くないと思うんだけど、俺は広いゲームが好きみたいだから、PoEに戻るね。君もどうかな?」という話をします。
この話で一番言いたいことは、「Diablo4をやっててストレスを感じた人や、シーズンでやることなくなったという人は、Path of Exile(PoE)の新シーズンが8/19早朝から始まるので、やってみると水が合うかもしれないよ」です。

逆に、Diablo4(ディアブロ4,Diablo IV)に満足している人は、いると思うし、それはそれで良いと思うんですよね。私は満足していないんですが、私にそう感じさせているDiablo4の(おそらく意図された)つくりって何なのか、という事を、掘り下げて話していきたいと思います。


最初に:私のハクスラ来歴

ざっくり、「PoEにどっぷり漬かっていて、Diabloも気になったので手を出してみた」人です。この文章もその視点です。
PoEは昨年5月から毎シーズンやっていて、ここまで約900時間遊んでいます。PoEについては紹介記事を書きました。

他を思い出せる限り書くと、

  • Diablo1のPS版やったけどわからず、ブッチャーがいたことは覚えてる

  • 真三國無双2は一応武器がハクスラだったよね

  • ソーマブリンガーの音楽めっちゃ好きなんです

  • Diablo3はswitchで2シーズン遊んだけど覚えてないなあ

  • ラストイデアでやっぱりガチャゲー+ハクスラ無理なんやなって

みたいな感じだったと思います。

窮屈なビルドの良し悪し

Diablo4の成長システム

Diablo4の成長は、前半のスキルツリーと後半のパラゴンに分かれていて、前半はスキルツリーにポイント(1レベル毎に1点)を割り振ります。アクティブスキル(戦闘で使う技)は、このスキルツリーからしか習得することができません(例外的に装備効果で使える事はある)。

あ、コアスキルを1つ囲み忘れてる…

ほとんどの技は、追加効果の付け方が2通りある、という形です。技には基本、コア、…というカテゴリ分けがありますが、基本技を2つ覚えるとかはできるので、20程度の技から自由に選んで、自分のビルドを構築します。

これに加えて、特定のスキルに追加効果をつける装備や、パラゴンで覚えるパッシブスキル(習得しているだけで強くなる)を含めて、ビルドが決定する感じなのが、Diablo4のビルドです。

Diablo4のビルドの「窮屈さ」

私は、このDiablo4のビルドに、窮屈さを感じています。

それは私が遊んでいるPoEにくらべるとどうしても、という話です。ざっくり比較するとこんな感じです。

単純に数で比較してもこの通りですが、Diablo4でドルイドで遊んでいると、

  • 基本スキルは、それだけで敵を倒すのに十分な威力がない

  • 基本スキルを敵にあてて入手する精神力(MPみたいなもの)がないと、コアスキルを使えない

  • 基本・コア以外のスキルは、長いクールダウン(数十秒)があり、戦闘の主な攻撃手段になりにくい

ので、基本スキルとコアスキルを1つ以上覚えるのはほぼ必須という感じがあり、数字以上にビルドの組み合わせが狭い(基本5種とコア5種の組み合わせに強くバインドされる)感覚を覚えます。

私は狼になりたくて(PoEには動物に変身するスキルがない)ドルイドを選んだのですが、狼のスキルは複数の敵を一度に相手するのが苦手で、追加効果でもそこを補強する事はできず、歯がゆい思いをする期間が長く続きました(今は諦めてコアスキルは雷にしてる)。PoEだと、攻撃範囲を増やす、攻撃頻度を増やす、といった追加効果が、概ねどのスキルにも付けられるので、こういった窮屈さはかなり少ないです。

窮屈さと引き換えに実現している事

私がプレイヤーとして見た時に、これは2つあると思います。

(1) クラスごとに大きく異なる手触り
Diablo4では、クラスごとの違いが大きくあります。
ソーサラーは、ドルイドとは異なり、MPにあたるものが時間で自動回復するため、基本・コアスキルに対する考え方が異なりそうです。
ドルイドには「敵を倒して集めてくる専用素材で自分を強化する」補助システム(精霊の恩恵)がありますが、ソーサラーにはなく、代わりに「スキルを2つ選んで、特別な追加効果をつける」補助システム(エンチャントメント)があります。
PoEでは、出発点と専用の成長項目が違うだけで、どのクラスでもどのスキルも使える仕組みであるため、このように、クラスによってシステムそのものから異なる、というものはなく、導入は難しいように思います。

(2) 低い学習コスト
1つのクラスのスキルツリーのノード(マス)は、百数十個程度に収まっています。パラゴンのパッシブスキル数十個をあわせても、少し時間をかければ読み切るのはそれほど大変ではありません。
PoEのパッシブツリーのノードは1000以上あります。これはすべてのクラスのツリーが繋がっているからですが、PoEではウィッチ(魔法系)がマローダー(筋力系)のツリーまで越境して耐久性を獲得する、といった事は普通で、そのためにパッシブツリーの内容を広範に把握する必要があります。
アクティブスキルはこれとは別に、その追加効果はまた別に知る必要もあります。これらはかなり大変で、ハクスラ初心者の心を折るには十分なものです。

また、プレイヤーの立場から離れると、アクティブスキル✕追加効果✕パッシブスキル、といった組み合わせの数がDiablo4は比較的爆発しないので、バランス調整などが行いやすい、という開発運営側の利便性を見ることもできます。

クラフトについても同様

ここまでキャラクター成長にフォーカスして話しましたが、アイテムクラフトについても概ね同様に学習コストの構造があります。Diablo4では一度手に入った装備品は

  • 強化する(最大5段階)

  • ついている効果を1つだけ変更する

  • レジェンダリー装備からレジェンダリーな効果を取り出して、別のレア装備につける

  • 宝石用の穴を増やす

しかできませんが、一方でPoEではクラフトの手段がめちゃくちゃ沢山あります。これを学んで、やっていって、自分の求める装備に近づけていくのはとても楽しいですが、めちゃくちゃ沢山のクラフト手段について知る必要があり、これは一朝一夕のことではありません。キャラクター成長なども合わせて、私はPoEに関してプレー時間以外に座学を300時間程度はしていますが、未だに全貌を把握したとは言えないのが正直なところです。

プレイング:避けるか、防ぐか

「俺はイライラ棒をやりたくてハクスラをやってるのではない」

Diablo4には「避けることはそれほど難しくないけど、避けなかったらとても面倒な攻撃」が数多く存在します。

  • 風の壁が出現し、触れていると動きが鈍って、そのあと凍結して動けなくなる

  • 魔法陣が出現し、数秒後に発動する。その時魔法陣の上に立っていると、恐怖状態になって自キャラが逃げ始める(操作を受け付けない)

  • 円形の毒沼が出現し、その上にいるとダメージを受け続ける

  • 大ぶりな武器攻撃で、当たるとピヨる

最初は面倒だけど避ければまあ戦えるのですが、ゲームの進行に従って敵の攻撃が苛烈になってくると、上記の攻撃が3種類同時に襲いかかってくる、といったシチュエーションが増え、避けるのが難しくなってきます。また、敵の数が増えてくることで、攻撃の予備動作が見えなくなったり、注意力を向けきれず見落とすといったことも出てきます。そして、敵が強くなるので、避けられなかった時に死ぬ可能性も高まります。(防御技で防げるけど、防御技のクールダウンはそこそこ長い)

安全地帯が狭くなり、細かい操作にミスが許されなくなっていく感じは、まるで電流イライラ棒のようです。

私は精密な操作が苦手なので、こういった状況ではとてもストレスが溜まります。

PoEにもこういう状況はあるんですが、決定的な違いがあります。それは、対策をビルドに積み込みやすい、ということです。たとえば、

  • 敵が死んだ時に毒誘導ミサイル爆弾を生み出す

    • (避ければ大丈夫)

    • 混沌(毒)耐性を十分に上げていれば素受けできる

  • 凍結攻撃

    • 選択可能な神の加護から「凍結を100%回避できる」を選ぶ

    • 「凍結した瞬間に自動で飲む、凍結が治るフラスコ」を作って装備しておく

みたいな感じです。

このように、対策を積み込める環境の下では、仮に積み込まなかったとしても、それは「私が決めたこと」になります。なので、避けられなくて死んでしまった場合も(PoEでは死ぬと経験値が減るのでかなりつらい)、理不尽さは感じにくくなります。

「当たらなければ、どうという事はない」

私はこういうつくりでストレスが溜まりやすいのですが、一方で、電流イライラ棒の代わりに「この攻撃への対策をどう積み込むか、あるいは積み込まないか」の判断を都度迫られる(それを判断する知識を求められる)事も、別の方向でストレスではあるのだと思います。私は楽しいけど!

一応、注意力さえ十分であれば、見える物への動き方1つで対策できることではあるし、アクションゲームだと考えるならそれは普通のことですよね。なので、Diablo4の建付けのほうが楽しく遊べる人がいる、のだろうと思います。

プレイング:見比べてみよう

実際に敵と戦っている時のプレイングがどれくらい違うのかを比べてみるために、動画を撮ってみました。どちらも、自分で考えたビルドです。まずはDiablo4から。

とにかく雷が沢山落ちるようにスキルと装備を調整したビルドで、やっと難易度トーメントでダンジョン周回ができるようになったかなーというところです。

次にPoE。

半年くらい前のシーズンで、新しく追加された「地面をぶっ叩いて火山を噴火させる」技を使ってみたくて、それを軸に組んでみたビルドでした。最高難度のダンジョンで久々に戦ってみました。

スピードと操作感の違い

スピード感の違い、伝わりますかね…?なんか単に私がハクスラ下手なのを晒してるだけのような気もする…。
どちらも30秒ですが、その間にPoEの方は複数の敵集団を殲滅しているのがわかるかと思います。

そしてもう1つ、技のクールダウンにも注目してみてほしいです。
Diablo4のドルイドだと、ビルドのところで述べた通り、基本スキルとコアスキルを交互に使うこと、それ以外のスキルはクールダウンが長いのでそれを見越して動くこと、をある程度せざるを得ません。
PoEのほうは、敵集団と戦うのに、2種類のトーテムを立て、バフを入れてから(光る魔法陣のやつ)攻撃を開始しますが、いずれも、次をすぐ撃つことができます。これは、そうできるようにビルドを調整しています。どのスキルもマナを消費しますが、マナが爆速で回復するので、回復時間を意識する必要がないのです。

クールダウンの違いは、操作感の違いにつながっています。
Diablo4ではいわゆるスキル回しに気を使う必要がいつもありますが、PoEでは毎回攻撃する時はルーティンで良いです。私自身は後者が好みですが、このPoEの操作感をつまらないと感じている人がいるのを知っています。

トレードと進捗感

トレードとゲーム本体の距離感

最初に白状しておくと、私はDiablo4でトレードを一度も利用していません。

トレードの意義は両者で実はそれほどは変わらないのではないか、という気もしています。Diablo4ではユニークやレジェンダリーの装備をトレードできませんが、「最高の効果がついたレア装備を買ってきて、自分でレジェンダリー効果をつけたもの」が理想的な装備でありうるからです。

しかし、Diablo4(普通に1人でプレーしていると、どこからどうやってトレードするのかすらわからない)と比較して、PoEはトレードがゲームのサイクルに密着しています。

「個別に値付け」は文意ママ、priceが記載されているものは均一セール

基本無料のPoEでは倉庫のタブをリアルマネーで追加購入できます。そして、このタブを「公開する」設定をすると、タブに置いたものを売りに出したことになります。

買う側はどうするかというと、

https://www.pathofexile.com/trade

公式のトレードサイトで探します。
さっきの売りに出したものが検索対象になっていて、アイテムの種類やついている効果などで細かく絞り込む事ができます。

PoEのプレイヤーにとって、このトレードを利用することは日常です。SSFモード(Solo Self-Found、1人で遊んで誰ともトレードしない縛りプレイ)がわざわざ存在するのが、トレードの立ち位置の重要さを示しています。

では、この距離感の違いが、プレイングにどう影響するのでしょうか。

宝探しか、生産か

Diablo4の装備品は、基本は自分で拾ってくるものだと思います。ユニークやレジェンダリーの装備品はそもそもトレードできないわけだし。欲しい物が手に入った時の嬉しさはありますし、Diablo4では「自分が装備できないもの」はほとんど落ちないので、要不要の選別がそれほど大変ではありません。

しかし、Diablo4では、「拾ってきたものを確認しても、装備して強くなれそうなものがなかった場合、ゲームの進捗はほぼない」感じになります。個人的にはこれが結構堪えます。ゲームが進むほどこういう状況が増えてくる印象です。(装備しないものを売れば金になるので、ゼロって事はないんだけど、金が既に潤沢にあるとそう感じやすい)

PoEだと、敵から落ちるものが幅広くあります。クラフトの手段が豊富な分、その素材も種類が多く、これが通貨の役割を果たして流通するのが、PoEの経済です。
幅広くアイテムがあるので要不要の判断がすごく大変で、そのために自動化の仕組みが用意されていたりもします(アイテムフィルター)。アイテムフィルターは設定しないと機能しないので、そこでまたPoEは遊ぶ敷居を一段上げています。

PoEでは装備品は多くの場合「作るか買うかで手に入れるもの」で、どちらであっても通貨≒クラフト素材を集める必要があります。なので、1回のダンジョン周回で、あるいは単位時間あたりで、どれだけの通貨+売れる装備品を拾ってこれるかが、ゲームの進捗速度を決定します。
そのため、PoEのダンジョン周回は作業の趣が強く、俗にファーミング(農業!)と呼ばれています。ダンジョンで通貨を生産してくる、というわけです。でも私は、ちゃんとやっていくと毎回毎時間進捗感を得られるのが好きだし、生産効率を突き詰める遊びが好きなので、「ファーミングですが何か??」という感じで遊んでいるのです。

二者の違いは、学習コストの違いにも影響しています。PoEでは「次にほしい装備はどんなものか」を決めて、それに向けて周回しますが、そのためには「次にほしい装備」がわかる、多くの選択肢から決められる知識を必要とします。一方、Diablo4では(傾向はあるみたいだけど)何が手に入るかランダムな装備品を、手に入ったものから吟味して、知識はその時に獲得すれば良いので、プレイヤーに優しいと感じられます。

Diablo4のストレス要素:今後解消されそうか?

解消されそうなものとそうでないものに分かれるのかな、と思います。前者は開発の都合でリリース時点ではそうならざるを得なかったもの、あるいは装備品のバリエーションが増えてくると変わってくるようなもの。後者は、Diablo4の開発者がこうあるべきだと決めてこうなっているもの。

たとえば、Diablo4はオープンフィールドで、世界に散らばる160個のリリス像に触れると少し強くなるという仕組みがあって、これがものすごくめんどくさい(ハクスラにとって強くなる要素を見逃すのは縛りプレイでしかない、取りに行くのは必須に近い)のですが、例えばリリス像が近くにあると教えてくれる、というような仕組みがあれば、各地を巡るついでに回収できるので、少し楽しくなるでしょう。一方で、各地を巡ってほしいというのは開発者の思想なので、完全になくなる、というのは考えにくいです。

プレイングがイライラ棒っぽいのも、たぶん意図してそうなっているので、治ることはあまり期待できないように思います。もしかしたら、ビルド幅の拡大で、対応し易いやり方が出てくるのかもしれないですけど。

特にゲームの前半、敵のレベルが自キャラのレベルに合わせて上がってくるのも辛かったんですが、あれはどうでしょうかね。レベル固定のPoEでは普通にできる「ザコ敵をどのくらい倒すかでゲームのしんどさを調整する」みたいなのができないんですよね。でもオープンフィールドとセットの仕様なので厳しいのかな。

今後:PoE次シーズン、D2R、PoE2

まずは来週開始のPoE trialシーズン。ExileConで発表されたアップデート内容は結構大きく、また「どう遊ぶか」考えるのが楽しそうです。
ExileConではPoE2についても発表され、プレイングの腕の重要性があがるのはDiablo4の方向性に近い感じを受けました。しかし幅の広さは変わらずのようなので、そうなるとどういう遊びになるのか、来年のサービス開始が楽しみです(不安もあるけど)。

Diablo4のプレイは一旦やめるのですが、n年後、nシーズン後に戻ってきて、どうなっているか見てみたいという気持ちがあります。でもその前に、私はDiablo2を遊んだことがないので、そのリメイクであるD2Rをやってみるとまた見えてくるものがありそうだなと思っています。

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