そそわSSレビュー1

「いいな」と思ったSSのみレビューします。

☆★★:よく楽しめた
☆☆★:非常に楽しめた、あるいは好きだった
☆☆☆:非常に楽しめ、好きだった

※作者名敬称略 

作:フランちゃんが好きな小説について早口で語って文ちゃんにドン引きされる話
著:蝉暮せせせ
星:☆★★

https://coolier.net/sosowa/ssw_l/233/1603654138

フランちゃんがかわいらしかった。
登場人物が二人しかいない時、(殆どの場合は)二人の魅力が十分に発揮されてなければならないが、
このSSにおいて文の魅力が引き出されていたかというと、それは疑問に感じる。
このSSにおける文の役割はフランを引き立たせるための当て馬、あるいは舞台装置である。
その手法自体はなんら責められるようなものではないが、
登場人物が少ない中でその「臭み消し」は殊更高い難易度を誇るのではないか。
例えば後半、フランが新聞をほめるが、これは文の魅力を引き出すという点で言えば効果の薄い描写だ。
このSSはフランがかわいければそれで成功なので、これで良いのだとは思う。
フランは誰が書いてもあまり利他的なキャラにはなりにくく、
いわゆる「常識役」のキャラクターとタイマンさせるのは結構難しいのかもしれない。


作:今宵はケーキを……
著:灯眼
星:☆☆★

https://coolier.net/sosowa/ssw_l/233/1604053301

私はそそわSSを読むとき、大抵「幻想郷を視れる」ことを期待している。
そういう意味で私は秘封俱楽部と相性が悪い。
彼女たちは幻想郷とつながりが薄い。
秘封俱楽部を書く時、その数少ない幻想郷性を補いたがるような描写を見ると、
とってつけたような感覚が襲ってきて拒否感が強い。
翻り、このSSの彼女らはただケーキを作って喰っているだけで、そこに幻想郷性は一切感じられない。
彼女たちの特別な目の出番もほぼない。
それがよかったのかもしれない。
これは面白かった。
かわいらしかった。


作:鬼人正邪、猫を飼う
著:めそふらん
星:☆☆★

https://coolier.net/sosowa/ssw_l/233/1604412264

このSSは、いまのままでも別に好きだが本当にもったいない出来だと思う。
明らかにもっと面白くなったのに、120点を目指せるにも拘らず80点に甘んじている。
この正邪は本当に感情の振れ幅がでかい。
そういう場合、正邪の感情が動いていることに対して説得力が必要になるが、
残念ながらこの作品においてその試みが十分に行われたとは言い難い。
「何百年も生きてきて築き上げた私のアイデンティティを崩壊させてでも言わなくちゃいけない」の部分はその象徴的な箇所である。
ここまでに「数百年分の天邪鬼としての矜持・哲学」を十分に示せていたとは言えず、その結果この描写はただ上滑りするだけのものとなってしまう。
二次創作では、読者が「読む前から既にそのキャラ(今回は正邪)への感情移入が十分できている」
ことが少なくないので、そういった人にだけ向けた(原作消費者共通のそのキャラに対する哲学へ訴えかけている)場合これで十分と言える。
しかし個人的には「東方二次創作」だけに限れば、幻想郷ごとに感情移入がリセットされうる特殊な環境であり、
そうであるならば1から丁寧に感情移入を積み上げるべきだと私は考える。

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