見出し画像

MOVIE 「正欲」

先月観てきた「正欲 」。いわゆるアブノーマルな対象に性的な興奮を得るひとたちの話、と聞いていたのでどうしようか、と観るのを躊躇していたのですが、知人が「ずっと死んだ目をしているガッキー(新垣結衣)がよかった」という感想をfacebookに書いていたのを読んで、終わらないうちに観に行こう、と映画館に足を運びました。

観てみて、これは性的なことのみならず、他者から理解されることがなく、絶対的な孤独感を持っているマイノリティの人がどうやってマジョリティに囲まれた「この世界」で生きていくのか、という話だと理解して、心をわしづかみにされました。死んだ目をしているガッキーはいつかの私です。子どもの頃から、家庭環境などいくつかの要因が重なって、ずっとずっと「他のひとたちとはどこか違う」「誰にもわかってもらえない」自分を感じて、心の中心にぽっかり空いた真っ暗な大きな穴に苦しみながら生きてきました。「当たり前」を前提として、家族、恋愛や結婚などパーソナルな部分に「なぜあなたは違うのだ」と無邪気に踏み込まれる経験は誰しもあると思いますが、「当たり前」が「当たり前」ではないマイノリティにはそれはただただ苦痛でしかありません。

それでも、作中のガッキーは、最後には「生きた目」をしています。彼女の最後のセリフが、長いこと真っ暗な大きな穴に苦しめられ、だけど人生の途中でその穴を一緒に抱きしめてくれる人と出会えたことで救われた自分自身にさらに重なり、涙が止まりませんでした。

エンドロールに流れる主題歌はVaundyの「呼吸のように」。静かに、作中の「わかってもらえない」思いを抱えて生きているひとたちの気持ちがひたひたと描かれていて、ますます泣けました。

見終わってスカッとするような話ではありませんが、しみじみと人の複雑さ、難しさ、残酷さ、あたたかさなどを味わえる作品だと思います。ご興味お持ちいただけたら、終映前にご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?