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いとへん(糸偏) 9

そして人生はつづく・・・・

手芸へのこだわりは、生まれ育った土地から逃げるように生きてきた自分のルーツへのこだわりだったのではないかと思っています。

いとへんの家に生まれ育ったことを話すと、恵糸やさんに訪れたお客さんたちは、一様に私のことを認めてくれるようになりました。

しかし、私自身の腕前がそれで良くなるわけもなく、やはり、わからないことは誰かに尋ねられる、最低限の社会性なくしては、何事もできなかったのだと思います。

それでも、手芸に一人打ち込む時間は、夫が仕事に出ている間の私を支えてくれました。カシミヤの糸で織ったマフラーやストールは、決して安くない値段をつけても、不思議と売れていきました。

ただその孤独なルーチンワークに、耐えることが難しかったのだと思います。

人間はやはり一人では生きていけない。

いま、私の作った作品たちは、トレーニングコースで名刺代わりに受け取ってもらえたように、ある種の外交ツールとして、私の生活を支えてくれているのです。

おしまい


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