言霊ってあると思う

私が娘とクライミングに取り組む際に一番大事にしてることは「あまりネガティブなことは言わない」です。以前どこかで見た知識なのですが血液型と性格の関係性は医学上証明されていないし恐らく関係もないんだそうです。でもA型の人に几帳面な人は多いしB型の人は良くも悪くもおおらかなイメージですよね、その血液型の本人もそう言うこと多いですし。その原因って子供の頃から「君はB型だからー」みたいに周りが言うので段々そんな気がしてくるんだそうです。一種の思い込み、或いは呪いのようでもあります。でもそれって案外当たっている気がします。日本には古来より「言霊」という言葉があります。言葉にやどる霊的なものという意味ですが周りから言い続けられた結果そうなっていくことが一種の霊的な力が働いた結果だと当時の人は思ったのかもしれませんね。付喪神やら八百万の神様の国ですしね、日本って。

クライミングの話に戻します。うちの娘は特にスラブを得意とするクライマーです。ただ私自身は他の同世代の選手と比べてそこまで秀でているとは実は思ってません。でも実際にスラブ課題が厳しいコンペでは勝てたりします。じゃあ何が他の選手と違うのか?たぶん周りの人に「スラブ強いよね」と言われた数が桁違いに多いからだと思います。スラブは恐怖心が結果に反映しやすい課題が多いですが「スラブは強い」という本人の意識が核心の一歩を踏み出せるんですね。すると成功しちゃうから成功体験として積み重なることで練習もするようになるので練度が上がっていくんですね。言葉の力ってすごいです。正に言霊です。

これに数年前気が付いてからは苦手に見えることを「苦手だよね」とは言わなくなりました。言霊は苦手方向にも働くと思うからです。かつて彼女はランジに苦手意識がありましたが今はあまり苦手意識はありません。口ではいってますが(笑)ターニングポイントだったのはスポーツクライミングの祭典「The North Face Cup2019」の本戦に(うっかり)進出してしまった時でしょうか。彼女はあの大舞台の準決勝で出たランジ課題に実に38回のトライ(大会史上最もトライ数の多い選手の可能性あり笑)を費やして見事完登しました。コンペは12位で終わりましたが大会を振り返るとこのコンペで出されたランジ課題は全て完登していたんですね。草コンペの最高峰The North Face Cupのランジ課題を全完、これを家族ですごく喜んだのを覚えています。これ以後「ランジが苦手」とは少なくとも私は言わなくなりました。それよりも「今日のランジ課題は前より少ないトライだった」「他のランジが得意な選手と同じ課題を登れた」と彼女のランジに対して細かく良いところを見つけて褒めるようになりました。すると本人も「ランジが上手い選手にトライ数では負けるけど止められないランジではない」と思うようになってきたようです。実際完登にかかるトライ数も格段に減ってきています。人並みにランジが出来る気がしてくるとスラブに自信があるのでコンペで上位陣と戦える意識になってきました。ランジの苦手払拭でスラブが真の武器化したわけです。

子どもはどうしても周りの大人の言葉を素直に受け止めてしまいます。だからこそ大人が子供にかける言葉はその先まで考えてあげるべきなんだろうなと思います。昔の人はその事を言霊という言葉で伝えたかったのかもしれませんね。

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