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【読書記録】絵本 いちにち

今年2021年4月に発行された絵本「いちにち」の魅力について書いていこうと思う。
この「いちにち」という絵本の作者、ひろたあきらさんは普段は芸人として舞台に立っており、自身の1作目である「むれ」はMOE絵本屋さん大賞2019年新人賞1位を受賞している。
この「むれ」という絵本も、今までの絵本にはないような発想と展開に、大人もワクワクさせられるし、なにより絵が非常に愛らしく魅力的である。
本棚に面出しで置いておきたくなるような、センスある作品だ。

で、2作目となる「いちにち」である。
これは、あるさかなの1日を描いた作品で、
「〜〜をします。さかなは、〇〇なのです。きょうはなにを〇〇かな?」
というシンプルな文とその隣にさかな🐟の1日をあらわす絵が描かれているのだが、不思議なことにその絵をじっくりと観察し想像を膨らませてしまう。
私だけかもしれないが、絵本を読む際に実はあまり絵を見ていない場合がある。
サッと見て次のページをめくる。2回目となるとほとんど文字しか追っていないのではないだろうか。特に大人になってからは。
しかし、この「いちにち」という絵本、「むれ」の時もそうであったが、じっくりと絵を見て「もしかしたらこれはこういう意味かな?」「さかなはこんな風に思ったんじゃないかな?」と深読みしてしまうのだ。それが楽しい。
ここからは、私が深読みした箇所について書いていきたいと思うので、しばらくお付き合い願いたい。

まず、さかなが絵を描いているページ。
さかなが描いている絵は、全て赤いものなのだ。
ここに、違和感を覚え、深読みしてしまった。
なぜ、赤いものばかり描いているのだろう?
車や、家、花など、別の色があるものでも、赤い色に塗られている。
不思議だ。
もしかして、さかなは赤い色の色鉛筆しか持っていないのか?
いや、スイカの皮の部分は緑だし、花の真ん中は黄色で塗られている。
なぜ?あえて描いているのか、無意識なのか、、
さかなの考えと共に作者の考えも気になるところだ。
そしてこう考えることにした。
魚は自分が青いから、赤い色に魅力を感じているのだ。
正反対の色をもつものに魅力を感じ、気づけば赤いものばかり描いていた。
そういうことにしておこう。

さて、次である。
迷路のページ。
この迷路のページには仕掛けがあり、どの道を選んでも必ずゴールに辿り着くようにできている。『道に迷うことがあっても、進み続けていれば必ず出口に辿り着く』という作者からのメッセージが込められている素敵なページだ。

が、問題はそこではない。
入り口に立っているウサギの存在と、迷路に散りばめられている泡、これが気になる。
なぜ、入り口にウサギだけが立っているのか。そういえば森のページでもウサギだけがさかなと同じ様に木の後ろから覗いていたのだ。
さかなとウサギの関係が気になる。
この点に関しては、作者であるひろたあきらさんに質問できる機会があり、答えを頂く事ができた。
とても納得の素敵な答えだったが、勝手にここに書いていいのかわからないので、控えておく。
それぞれの想像にお任せします。
真実はいつも1つではない…!

散りばめられた泡について、何故気になるのかというと、他のページではだいたい魚の口元から泡が出ているのに、迷路のページは道に散りばめられているからだ。
きっと、さかなは何度も迷路に迷い、考えた挙句、ヘンゼルとグレーテルの様に、通った道に目印を置いたのではないだろうか。
この絵を見る限り、さかなはもう全ての道を通っている。出口を見つける日は近い。

最後に、これは深読みというか、不思議な絵だと感じたところだが、さかながそらへ来るページ。
この絵は2番目に好きなページだ。
さかなが空の上から見た景色が描かれており、その中にはゾウやキリンと共に怪獣やネッシーの様な幻の生物も生息しており、さらに町の建物は有名な建築家が立てたか、近未来の様な形をしている。ひとつひとつを見ても全体をみても面白い絵だ。
が、問題はそこではない。
この街の絵はさかなが上から見ているから小さく描かれているのだが、全て横から見た様に描かれているのだ。
横から、は読者目線。
しかし、上空にはさかなが大きめに描かれており、確かにこれはさかなが上から見下ろしている絵なのだ。
その両方を成立させている不思議な絵。
なぜ、成立するのかというと、雲が下に行けば行くほど小さく描かれているからではないかと思う。
読者が横から見ている目線と、さかなが上から見ている目線、その両方を成立させた不思議な魅力あるページなのである。

そして1番好きなページは、なんといっても「すこし やすみます。」のページだ。さかなが寝ている時に見ている夢を描いているのだが、これがほんとにバラエティにとんでいて、どれも面白い。しかもさかながやってみたいことばかりなのだ。今気づいたが、寝ている間の夢だから怖い夢があってもいいものだ。
それが全部、楽しそうな夢ばかりだから好きなのかもしれない。
さかなの根っからのポジティブさと呑気さと好奇心が垣間見え、ひとつひとつの絵を何度見ても面白く、それこそこれは何をしているところだ?と想像をかきたてられる大好きなページだ。そしてこのページだけ、目を瞑ったさかなが見れる。レアページなのである。

以上が深読みをして楽しかったページである。
この絵本には、他にも隠れた言葉があったり、隠れた星の色があったりと、発見がちりばめられている。
そして、もちろんのことながら、物語としても素晴らしく、全体を読み終えた後の最後のページにハッとさせられるのだ。
だから、100%この本を楽しむ為には、帯に書いている様に「この本は必ず最初から読んでください。」
そして、一度読んだ後は、発見や自分なりの深読みを楽しんでください。

とにかく、お家に1冊、保育園に5冊くらい置いておいてほしい、めちゃくちゃおすすめの絵本です!!!


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