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未定

昼下がり、澄んだ空気に身を震わせ、鼻を啜る。昨夜は一気に冷え込むと聞いていたから、エアコンをかけた。そのおかげで鼻の調子が良くないようだ。どこか頭も痛い。しばらくの間掃除をしていないのも原因か。面倒だなぁ。
 女は頭痛を抱えながら駅までの道を歩く。午後休を取って帰宅するところだ。職場でポケットティッシュを使い切るほど鼻をかみ、電話がすぐに取れないほど咳込み、のど飴を口の中で鳴らしながらのパソコン業務を行う姿は、上司の目にもよく映らなかったようで、帰らされてしまった。せめて在宅勤務にさせてくれないか交渉したが、上司が許してくれなかった。女は大人しくデスクわきに置かれたティッシュの山を捨て、休みの処理をし、退勤したのだった。はあ、と大きなため息をつく。保育園入りたての子どもの世話もあり、有給の数に余裕がない。それなのに自分のこんな体調不良で仕事を休んでしまった。まぁ、午後を在宅勤務しさせてもらっても仕事の効率もクオリティも上がるわけではないのは分かっている。今日は諦めて、大人しく休むに限る。
 今日はどう過ごそうか。頭痛に咳、鼻水と、バチバチに風邪の症状が出ているが、せっかくの平日の休みだ。女は自分のために時間を使いたい。
 ふと、女の脳裏にリビングの光景が浮かんだ。朝からバタバタと、仕事に行く準備と保育園へ連れて行く為の準備をして飛び出したリビングだ。朝はいつも時間が無く、当たり前のように散らかったリビングは、普段の平日のおうち時間だけでは片付かないのであった。あの散らかったリビングを片付けるか?考えただけで頭痛が悪化する。
 自分のために時間を使うとしたら、何があるだろうか。旦那のように隠れて異性の友人に会いに行くか?それもそれで頭痛がする。なんの反撃にもなりはしない。心がさらに虚しくなるだけだ。それに私の異性の友人にも迷惑をかけてしまう。例え、そうしたとして、旦那に「ほら、悲しい気持ちになるでしょ?」だの、「自分がされて嫌な事はしちゃダメでしょ」だなんて言葉は響かない。ただただ自分自身の信用を失うだけで、メリットが見当たらない。
 そうこう考えているうちに最寄りの駅に着いた。まずは昼ごはんを食べなきゃ。
 

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