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【音楽レヴュー】THE STREET SLIDERS 40th Anniversary Final Special GIG「enjoy the moment」WOWOW生中継 24/04/06日比谷野音

※このレヴューは、WOWWOWでの生中継を視聴して記したレヴューです。
 会場である日比谷野外音楽堂で直接観て記したレヴューではありません。

 4/6(土)17:30よりにWOWWOW放送において、TheStreetSlidersの東京日比谷野外音楽堂でのLIVEが生中継された。昨年5/3に日本武道館で行われた23年振りの再結成LIVEに続く生中継LIVEである。
 コロナ下におけるオンラインLIVEと言う新たな方法が生まれ、
メンバーも昨年の武道館での生中継も経験しているとはいえ、
目の前の観客とその場に居ない視聴者の二手を相手にするLIVEは
多少のやりずらさはあっただろう。今回この1年間のツアーで毎回行っていたであろうメンバー紹介がなかったのは、その影響があったのではなかろうか。
 ただ、ハリー声の出が途中聞いている分には幾分つらそうではあったが、ハリーの表情が全くそれを気にしていないように見えたのは映像で観る利点であった。

「IT'S ALL RIGHT BABY」のオケだけがSEで流れ、メンバーが登場し、ズズが音を確かめるようにドラムを数回叩く。LIVEが始まるという緊張感と昂揚感の中、1曲目が始まる。
 音のバランスは良い。聴きやすい。ここ20年程封印していた訳ではないだろうがボトルネックやワウを使った公平のギターの音がとてもよく聞こえてくる。
 また、中盤の「すれちがい」と「カメレオン」では、リズムギターとリードギターという二本のギターの絡みを綿密に考えているThe Street Slidersというギターバンドの良さと特徴が良く表れていた。
 LIVE中何度かメンバーの背後にカメラが回り込み、メンバーの後ろ姿と客席(観客の顔は見えない)が映し出されたが、これは会場へ行けずWOWWOWでLIVEを観ていたファンを楽しませたことだろう。会場の風や匂い、温度を感じられない分、会場に居ては観ることの出来ない貴重なショットであった。また、途中ハリーがギターを弾きながら後ろ足で下がろうとした際に
よろめいたり、ワンマイクでハリーと公平がハモるときに互いの手がぶつかり合ったりする様子も、LIVE中継ならではの醍醐味であった。

 また、今回のLIVEで滅多にない試みとして披露されたのが
後半の三曲で導入された三名のホーンセクションだ(「oh!神様」「BADな女」「Back To Back」)。
 LIVEにホーンを入れたり鍵盤を入れる、などの編成は嘗てあまりなかった。しかしながら出来ない訳ではなかった。パーカッションが入ったLIVEというのも過去には行われたことがあった。
 そしてこのバンドの場合、メンバー以外のゲストによる楽器をバンド内に導入する場合、それがデコレイトや能力不足を補うための導入にはなっていない。一つの楽曲に対してホーンを導入するという決定を下すところには、その曲の完成度に対する判断とまたそうすることでも揺るがないツインギターのギターバンドであるというバンドの特性とそのスタイルの自覚があったはずであり、またその実現を可能にするアレンジ能力が必要になってくる。
過去にアルバムに収められたそれぞれの楽曲においてそれは結果的にバンドの特性を損なわず全てクリアされており、非常に上手く行っていた。今回ホーンを入れたこの三曲は、そのslidersの特性を思い起こさせる良い選択であった。特に「BADな女」は出色の出来であった。

 アンコールは2曲、1曲目は「いつかみたかげろう」であった。
 昨年の再結成武道館LIVEでのアンコール1曲目は「のら犬にさえなれない」であった。喪失感や寂寥感を歌った曲を再結成LIVEのenc1曲目に持って来たことを自身の原点を忘れず自己を見つめ直す、という意味に捉えるのであれば、今回の他者への思い遣りともいえる関心や呼びかけを歌った「いつかみたかげろう」をenc1曲目に持って来たということは、ファンやスタッフなど周囲へ目を向けるメンバー自身の視野の変化や拡がり、という意味になるであろう。この1年間に及ぶAnniversaryTourの中で、Slidersの表現を考えるうえでの注目すべき2曲といえる。

 Tourはひとまずこれで終了するようである。
 メンバーはそれぞれ個の活動を行い続けるだろう。
 ファンはどうするだろうか。
 そういえば、再結成武道館LIVEでの本編の最後の曲は「お前次第さ 西でも東でも お前次第さ 誰かが呼んでるはずさ」という「風の街に生まれ」であった。そしてこの曲は今回のアンコールの最後の曲でもあった。
 そう、ファンはまた間違いなくSlidersを呼び戻そうとするだろう。

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