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小説執筆にはアメリカンスピリットが合う。アメリカンスピリットと言っても、”アメリカのように自由な魂を持って小説と向き合え”とか、そういった話ではなくて、執筆中の喫煙には、アメリカンスピリットという銘柄のタバコが合うという話だ。 アメリカンスピリットは燃焼時間の長いタバコだ。一般的なタバコに比べ、巻紙に葉が多く詰まっていること、燃焼剤や香料などの添加物を使わず、無添加素材で作られていることなどが、燃焼時間を長持ちさせる要因らしい。 パソコンに向き合い、文章を打ち込む。
南原清隆の頬骨を見て不快感を覚える人間はそう少なくない。あの逆スクリームフェイスのような彼は不気味の谷の体現者だ。中には恐怖すら抱く人がいるだろう。これから紹介する少年はそれ故に悲劇的な結末を迎えた。どこにでもいそうな少年の夭逝。それは奇妙な事故だった。 彼は三重県四日市市の小さな産婦人科医院にて生を享けた。生まれつきの虚弱体質であり、日光アレルギーと重度の喘息が原因で小学校低学年から不登校だった。それ故彼は友達が一人もおらず、両親以外で話す人間は、自分の体調を定期的に聞
朝起きるとキムチになっていた。正確にはススム君のお父さんがパッケージの「ご飯がススム辛口キムチ」へと姿を変えていた。中の赤い白菜が美味そうに見える。 「やれやれ」僕は鏡を見て呆れた。「キムチになるとはね」 僕は朝のルーティーンとして洗面台に向かい、髭を剃ろうとした。でもよく考えたら肌がプラスチックなのでシェービングなんてできるわけがないのだ。そういえば、と思って歯を磨こうともしたが、口らしいところがないのでできなかった。ちょっと恥ずかしくなって、リビングへと向かった。