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帽子屋と喧嘩した三月うさぎは

この間まで そう あのテーブルを囲んで帽子屋達と お茶会をしていた三月うさぎは お茶の味も分からないのに 確かお茶の味のことで 帽子屋と喧嘩した もう君とはお茶会をしないと 宣言して本の中から文字通り ぴょんと飛び出した 怒っているんだけど だんだん悲しくなって 涙がぽろぽろ零れそうで 慌てて三月うさぎは 空を見上げた そこにはなんと大きなお月様 三月うさぎは ぴょんぴょん跳んで行く 涙がこぼれないように ぴょんぴょんぴょんぴょん そした

    • 猫の仕事

      私 野良猫は捕まった にこにこしてる男に 弱ってるところを捕まった あの日は少し油断していた 暖かい日が続いて 私に石を投げてくる 子供もいなくて つい知らない男から 優しい顔をした男から 飲み物をもらった どうやらそれに毒が 入っていたよう しばらく経つと 私は動けなくなった そして私は捕まった この間の優しい顔した男ではない その男は私に働きなさいと言った 私は野良猫だけど 野良猫は野原で みなしご子猫に餌の取り方 寝床の見つけ方なんかを 教えてなんとなく だれかと

      • 藁人形虐待防止法

        私は今日も藁人形を作る だって世の中にはいろんな恨みが 溢れすぎて 苦しい人たちがいっぱいいて 私も苦しい人で 私の藁人形は あの有名なネットオークションで 売っていたりもする 今日も高さ15センチ 5g 素材は稲わら 糸で 半日ほどかけて完成させた藁人形10000号 そっとテーブルに寝かせる 寝かせたはずだった  その藁人形が立ち上がっている いつからか1人でいた部屋には藁人形達がひしめいている 藁人形たちは円形になって 私を取り囲んで落ち着

        • 下着をこちらに見えるように干すな マンションの部屋の隣のおじいさんが声をかけてきたらしい 彼はずっと独身で女の人と 付き合ったこともないって そう言ってた 恋したことないのかな この頃は、暑くてしんどいと 日がな1日テレビの前で 右に転がり左に転がりしてるみちこちゃんが薄笑いを浮かべて隣人の事を呟いてる 衣食住足りて みちこちゃんは、恋多き人だ 3回結婚して、3回最愛の人は他界している 70歳になったけど まだまだ恋に貪欲だ 先月から、デイサー

        帽子屋と喧嘩した三月うさぎは

          夢を見た

          何だかその昔河童の国と日本に国交があった 河童の国はそれはそれは貧しかった 世界の水辺が汚れてしまい 魚が捕れなくなったから 食べることに困った河童達は日本に出稼ぎに来るようになった ある地方の河童達は美しかった だから悪い大人達はこの美しさで儲けようと考えた ショーパブで 河童達に歌を踊りを覚えさせた 星をちりばめたような眩しい衣装も用意して 開店時間は夜8時 今日はお店に新しい河童が入った 初めて日本に来たらしい まだ河童語しか話せない エメラルドのような透き通る肌

          夢を見た

          薔薇

          私を踏んだあの人が 憎くて仕方なくて 今度会ったら 引っ掻いてやろうと 私は毎日毎日爪を 研いでいるのです そういえば最近 あの人は来ませんね 雨が降っているから でしょうか 私が踏まれた日も こんな風に しとしとと冷たい雨でした そんな爪研ぐ日々を重ねながら 私は気づいたのです 私の爪ってやっぱり綺麗だ 最初はただ顔色悪く 私の指にくっついてたけど 今はこんなにツヤツヤと 赤いそして硬い 棘みたいに このまま年月を重ね

          山の上の桜の木 その根元には 小さい金の蛇口があって 生まれたての春一番は 柔らかな手でその蛇口を ゆるめたりする そうっと そうっと 小さな蛇口からは もちろん春が きらきらと溢れ出す ららららと歌い出す 春ですよ 起きて みんな 起きて 私もそろそろ起きないと 耳を澄ますと聞こえてくる 遠くから 優しい音で らららら ららら ふわぁーんなんて あくびをしながら 我が家のミモザも歌い出したりしてる