政局論評#1

 安倍元首相の死去以降、自民党と旧統一教会との関係が盛んにメディアで取り上げられ、7月下旬から支持率は急落し危険水域に突入した。

 岸田政権は3つのポイントで対応に失敗した。
 一つは内閣改造だ。安倍元首相の四十九日を待って改造が行われると見られていたが、岸田首相は奇襲作戦で内閣改造を一ヶ月前倒しした。旧統一教会との接点が確認された閣僚を中心に交代させたが、山際経済再生相のように接点が指摘されながらも留任する閣僚もおり、国民に対して旧統一教会との関係を断ち切る姿勢を鮮明にできなかった。
 二つ目は党のアンケートである。自民党は各議員に対し、点検という形で接点を確認させそれを自己申告させた。しかし、点検の結果を発表した後に点検漏れがある議員が出でくるなど不十分さが目立ち、支持率下落の原因となった。
 三つ目は山際経済再生相の更迭の遅さである。詳しいことは別の記事を参照してほしいが、山際氏の更迭をめぐり国会対応も混乱した。

 また、首相官邸のチームもここに来て緩み出している。松野官房長官は進んで泥を被る動きを見せていない。木原官房副長官は政策の案件を引き受けるあまり、国会対応などの面で不手際が目立つ。また、嶋田政務秘書官、栗生官房副長官、森首相補佐官らの官邸官僚も積極的な動きを見せていない。
 かつては嶋田政務秘書官、栗生官房副長官、森首相補佐官、秋葉国家安保局長らが同時期に事務次官を経験しており、チームとして連携が取れていると評されていた。
 しかし局面が変わり、政権はいまや緊急事態に陥っている。安倍官邸のように霞が関に対する「暴力装置」も必要になっているのではないか。

 ただ、10月30日の世論調査では、共同通信、日経新聞、産経新聞の3社ともに内閣支持率は横ばいであり、支持率低下に歯止めがかかったと見て良いだろう。
 要因として、政府が解散命令を視野に入れた質問権行使に向けて動いていること、問題閣僚の山際氏を更迭したことが挙げられる。
 

 岸田政権は今国会を乗り切れば、少なくとも2年間は在任できるのではないかと考える。その分岐点はまさに現在なのだ。
 事務所問題が取り上げられる寺田総務相、秋葉復興相、さらに土地取引問題が浮上する岡田地方創生相なども今後野党の追及を受けることになる。
 ただ、松野官房長官を中心とした官邸チームの再編、党側との連携、補正予算の執行による経済対策の3点をしっかりと進めていけば安定した政権が築けるであろう。
 激変する国際情勢、経済状況を考えると今は首相をコロコロ変える時期ではないのは明らかだ。岸田首相には混迷を脱出するはっきりとした方針を示してもらいたい。

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