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綺麗になりたい人 その2

髪を切った私に 違う人みたいと
あなたは少し照れたよう 前を歩いてく


前髪1ミリ切り過ぎた午後 あなたに会うのが
ちょっぴりこわい


髪と女心
恋と女心
髪は女の命
アイドルの歌の歌詞にも良く出てくる程
髪の毛を切る、髪型を変える事は一大イベントなの。
何歳になってもなの。
、、、前髪はよく自分で切るけどね。

数ヶ月が経ち、私は女の店長さんがしているお店をネットで再び調べた。
そこにはもう彼女の名前は無かった。
異動になったのか辞めたのかは分からない。
常連でも無かった私にはなんの情報ももたらされなかった。

振り出しにもどったな。

それから、二ヶ月は過ぎただろうか。
ネットで再び駅近の美容院を調べ行ったのだった。
値段は安くは無いが店が最大一度に2人しか出来ないこじんまりとした美容院だった。
ほんの少しだけ人見知りな私は他のお客さんと合わないという利点に目を付け、口コミを見ながら、同年代の人が通うお店という事で安心して
そう、ドアを開けた。

程よく話しかけられて程よく静かな雰囲気のままやってくれるので良かった。
その程よい話の中でどんな流れからはもう忘れたけど、好きな音楽の話になったのかなー?
そこの男性店長さんはボイパを聴くとのこと。

全部口で楽器を奏でて音楽を演奏する?てのか?
テレビで見た事ありますあります。

店長さんはタブレットで自分のお気に入りのボイパのYouTubeを出して来て、私にタブレットを持たせた。
ま、まあ、髪を乾かしてるし、私はタブレットに集中する事とした。

ミュージックが流れてるの?の思うくらい
ボイパの技術と言うかセンスのいいYouTuberで私は自分の日常の中では決して流さない曲だと思いながら小さな非日常を両手の中で味わっていた。
いや、味わって見た。
いやいや、、味わって見たけど。
けどが正しい。

おん。おーん なるほど。曲が終わり
「凄い器用な人もいるもんですね!」とタブレットを返した。
髪はまだ半乾きの頃合い。

店長さんはタブレットを受け取ると
「そうでしょーー!凄いでしょーーー!!
僕はね、この人もいいんですけど、こっちも凄いんですよー」

なぬ、、こっちも、、?何?その選択した感じは。
まだ聴くの?私?

私の年齢からして、100歩譲ってだな、まだ昭和のグループサウンズやブルースを聴いてたほうが、、まだね、、、
他の客は居ないこのこじんまりスペースが絶好のチャンスとばかりに店長のテンションも上がって行く。

画面の中のボイパの人の髪がまた個性的。

お椀型の髪に後ろだけロングと言う、、謎の髪型。
ドゥンドゥン♬
ボッボッボボッボ🎵
ドックドッグピャーーン、、
私には表現出来ません。

和田あき子の
「あなたは何をされてる方なの?」って有名なフリの言葉があるけれど、

「私は今、、何を聴かされているの?」
そんな言葉が浮かんでは消え浮かんでは消え、、
私の髪のドライヤーのスイッチをOFFにしつつ、まだ私に聴かせたいらしい。  
手を止めるな、、

でも、不思議なものね。
興味無かったのに何回か聴いていると、、って言いたいとこだけど、興味が無いものは無いのだった。
最後まで聴いて

「凄いわ!」と言い
「私が顔を上げたら画面の中のこの人の髪型だったらビビりますよ」と告げ、スタイリングが終わった乾いた私の髪の毛と仕上がりを鏡で見たら、
え?

前髪がオンザになってた。久々だなー
幼稚園以来の前髪だなー

店長さん、聖子ちゃんの歌、知ってるかな?

新しいジャンルの音楽に出会えた事に感謝する。
そして一期一会。
さようなら。私はドアをそっと閉め
振り向かないで帰った。

私はただ、綺麗になりたかっただけなのよ。
ドゥンドゥンドゥクドゥクボッボ、、ピャーン

おわり。



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