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〔132〕張作霖と張学良(2)

〔132〕張作霖爆殺に関する中観流的考察
 前稿〔131〕は、張作霖と張学良の出自と関係について語るつもりで始めた処、思いもかけず、「明殺と暗殺」および「本当の死と偽装死」に関する解説が肥大化してしまい、張学良に付いて述べる紙数がなくなりました。
 原因は、張作霖爆殺犯について対立する「河本大作説」と「ソ連陰謀機関説」について中観流の観法を用いた落合が、前者を正解とする考えにつき、國體舎人の判定を求めた処、「そもそも張作霖があの列車に乗っていたかを含めて・・・」と思いもかけなかった応答がありました。
 落合が諸事を判断するときに用いる方法論は「中観流観法」で、諸事を整理して「対立する両観念」とし、双方を平等に扱い中間の立場でその言い分を聞くというものです。
 本来「空」のこの宇宙では、人類の歴史も本来「無事」のところに発生した「因縁」の展開に過ぎません。「対立する両観念」は同時発生して相互依存する仮の存在ですから遭遇すれば対消滅して「空」となります。
 「河本大作説」と「ソ連陰謀機関説」は素より「対立する両観念」で、落合がその可否を判断するために両者を接近させたところ、対消滅して「空」に戻り、新たに生まれた対立観念が、「張作霖生存説」と「張作霖死亡説」です。
 それに対する中観流的判断は、今後の課題としてしばらく措き、ここでは〔131〕の読者から寄せられた感想を紹介しつつ、諸兄姉とともに考えていきたいと思います。
 まず、わが國體歴史探偵団の同志たる拾得居士から送られてきた下記のコメントです。
 
 偽装死説、さもありなんと納得いたしました。と申しますのは以前、張作霖の出自を調べた際、加藤鷹男著『謎解き「張作霖爆殺事件」』を読み、爆発現場の状況と関東軍の供述に齟齬がある点や、河本大佐が事件後、盲腸になり麻酔を拒否して手術を受けた(前後不覚になることを恐れた?)からです。拾得稽首
 
 さすがは中観流の高弟っ拾得居士でご意見は大いに参考にいたします。
 つまり、張作霖爆殺事件(以後「張作霖坐乗列車爆破事件」という)の真相を知っている河本大佐は、全身麻酔時に無意識的に口に出るうわ言を警戒し、敢えてアヘン以外の薬で苦痛を緩和しながら、盲腸の手術に堪えたのですね。
 もう一つは、同じく「國體歴史探偵団員」の高島吉人くんからのコメントです。

 
 先生いつもありがとうございます。
 本日、長年の疑問が氷解したような気が致しました。
 それは、古野直也氏の『張家三代の興亡』に書かれていた以下の部分です。(河本大作には二人の娘、將と清がいました)

「將はアメリカのプリンストン大学を卒業しているが、「作霖の孫即ち学良夫人于凰至との娘とクラスメイトだったと語っている。殺した人の娘と、殺された人の孫娘が一緒に学ぶとはなんと不思議な縁であろうか」という部分です。
 これは何か一つのメッセージではないかと考えていました。
 
 なるほどなるほど、古野氏のことはこのnote でも書きましたが、『張家三代の興亡』のその部分は覚えていませんし、その本は狸庵の書庫の何処かに眠っていていまだに見つかりません。
 前後の文脈が分らぬ今は論評できませんが、落合が『張家三代の興亡』に強い興味を抱いたのは、口絵の写真に「古野さんが張学良に逢いに行った時の写真が掲載されていることです。
 該著の内容ことに張学良に対する人物評を見た落合は、「このような罵詈を投げた相手に、よくも古野さんは遭いに行けたなあ」と、少なからず呆れてしまい、複雑な心境のまま今日に至りました。

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