映画「BLUEGIANT」感想
⚠️ネタバレあり
タイトル「BLUE GIANT」
熱量が高く、赤色を通り越して青色にまで達しているような人物を表す言葉として作中で話されていた。
BLUEはso blueに10代で出演することを目指していた彼ら主人公達の青春の青にも掛かっており、そんな青春という「一度しかないその瞬間」はアドリブで演奏されるジャズにも意味が通じている。
この映画を表すのにぴったりのタイトルだ。
この映画を見た人は口を揃えて言うだろう、
「めちゃくちゃ良いぞ」と。
「面白い」「面白くない」じゃなく「めちゃくちゃ良い」と言う人が多いだろう。
ストーリー自体は映画あるあるの「結成」→「成功」→「危機」→「最後のライブ」のため、着目すべきはキャラクターについてだと考える。
まずは主人公である「宮本大」
努力ができて、雪折にも才能を認められている、いわゆる天才というような人物。
世界一のジャズプレイヤーになるという目標を持っていて、ジャズに対して「アツくて激しいところが好きだ」と語る彼はこの映画内では人々を引っ張っていくような役割を担っていると私は思う。
ジャズが本当に好きで信じているからこそ一貫した思いを持っていてブレない。だからバンドメンバーが問題を抱えれば自論を話したり、思った事を伝えている。バンドメンバーもその姿勢と熱意についていく。
逆にキャラクターとしてあまり変化ないとは思ってしまうが、映画からジャズを知る人もいるため、「ジャズはこういうものだぞ」と体現してくれる存在となっている。
大から学んだことは「いっぺん死んでこい」という言葉。
悪口ではなく、そのまま燃え尽きて死ぬぐらい本気でやれという意味であり、全力さが伺える。
続いてドラムの「玉田」
大の居候先として出てきたが、ジャズに真剣に向き合う大に影響を受けドラムをスタートする初心者という枠だ。
初心者スタートのため最初はミスを連発してしまうのだが、このままじゃダメだとドラムに打ち込み成長していく。
玉田の成長は、初ライブからずっと見守ってきたおじいさんの「君の成長するドラムを見にきているんだ」というセリフで強調され、最後のライブ直前に雪折が認め、映画内初のソロを最後のライブで披露するという、成長をありありと感じさせる上手い作りで見せてくれる。
誰でも真剣に努力すれば成長できるという事を体現していて、一般人上がりであるからこそ視聴者の共感も得やすくなっている。実際自分も映画を3回見て玉田のソロで3回泣いている。
玉田から学んだものは「今やらなきゃ今後の人生ずっと後悔する気がする」という感じのセリフ。先延ばしにせずやりたいことはやるべきだなと思わせてくれる。大学を留年した玉田がいうため説得力が増している。
最後にピアノの「雪折」
4歳からピアノをやっており、14年努力を積み重ねていて技術は高いが本人は音楽の世界を才能の世界と話している。
そういった面も合わせて音楽の厳しさを表現するためのキャラクターというのが説明として合うだろう。
テクニックはあるがソロが弱い、腕は立つが態度が悪いと指摘されたり、過去の経験から「音楽をやるには条件がいる」と語ったのち、トラックと事故を起こし音楽ができなくなってしまうという中盤からの雪折虐展開。
しかし彼は、人生全部を否定するような出来事が積み重なっても、諦めないことが大事と言うかのように動く左手で作曲をしている様子が描かれている。それが雪折からの学びともなっている。
どうして毎回涙するのかと考えた時、
大の一貫した姿勢が報われて、玉田の努力が報われて最後のライブが行えたことの感動と人生丸ごと積み重ねてきた雪折がライブに出れなくなってしまった悲しさがいっぺんにおとづれるからと考えた。雪折→大で暗に積み重ねてからわかりやすい玉田のソロで解放されるという上手い流れにもなっていると思う。
3人それぞれが、主人公として経験を積んだからこそラストでその積み重ねや変化を感じられる、キャラクターに重きを置いたよくできたドラマだった。
音楽は世界的なジャズピアニストの上原ひろみさんが担当されており、サントラをリピートするくらい良い曲が多い。
アニメーションに関しては多くの人が言うようにCGのクオリティが気になるのだが、玉田のソロを手書きで描き切ってくれたところで全部許してしまった。