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コートの中のイタリア

(トップ画像はサンタクローチェオフィシャルサイトのトップページ https://www.lupipallavolo.net/)

ふとしたきっかけでこんな本を見つけたので早速買って読んでみました。出版は2011年とちと古い。折しも6億円宣言がでたところ、急いで読了しました。

全体としてはイタリアのバレーをとりまく政治経済地理歴史の各方面を紹介。東大経済学部卒の会計士が書いただけあって、データも充実。タイトルに反して「コートの外のイタリア」について書いてある。ちなみに刊行直後に書評を上げてくださったかたもいらっしゃっております。さすが!!

前半1/3の見所は、主要スポンサー各企業の売上高の紹介で、ちゃんとした表はないが各スポンサーの売上高が重ね重ね数十億~数百億円という中小企業であることが明かされる(この情報ググっても全然出てこないのよ。非上場だから)。ちなみに日本だと直近ではパナソニックは連結7兆円、豊田合成で8400億円。地場の中小企業を渡り歩き、世界一を夢見て資金を集めるクラブの営業マンの姿を思い浮かべると胸が熱くなるよね。

合間にイタリアバレーの歴史を挟み、著者がミラノ近郊の複合スポーツクラブ、そしてA2サンタクローチェと言ったローカルな現場を自ら取材するのが後半の1/3(トレントとかマチェラータまでは足を延ばせないよな...)。サンタクローチェは今もA2にいて昨季は2位であった。へぇー、と思ったのはイタリアではスポーツクラブに対して寄付をすると(日本よりかなり緩い基準で)税控除が受けられるということ。日本のふるさと納税もこういうのがあるといいんだけどな。またサンタクローチェの運営費は年間1.5億(当時)かそこらと書かれていて、規模的には中小企業どころではないと思うが、今の名簿を見るとちゃんと(わざわざキューバから呼び寄せたかはわからないが)キューバ人を雇っていて、プロのクラブなんだぞという意地を感じる。マネージャは「人々の情熱こそがクラブを支えているんだ」と力説する。

イタリアバレー各クラブの栄枯盛衰を見ていると、それは華やかなグローバルスポーツビジネスというよりは、地方の中小企業の自転車操業だなとしばしば感じているのだけど、本書を読んでそれを改めて実感した。そういった中小企業の経営なんてやったことない人間には無理ゲーとしか映らないんだけど、実際ルベもトレントもそういう規模でトップグループに居座り続けている。メインスポンサーの売り上げでみて、百何十億のチームが、7兆のチームよりずっと強いなんてロマンしかない。(今後バレーが世界でよりメジャーなプロスポーツになっていくと資本化は避けられないだろうけど)

そんなわけで、これまでVリーグのプロ化がうまくいかなかったのは、お金がないからというだけではないんじゃない?まあ実際足りないし、稼ぐためにやらなきゃいけないことはたくさんあるんだけど。そんなことを思いました。