クリアアサヒとチャンジャ

21時30分、家から1番近いファミリーマートにいた。
今日は珍しく遅くまで残業し、その足でジムにも行った。
このまま帰るにはストイック過ぎる、そんな夜。
ジムからの帰り道、ふらふらと通りすがりの居酒屋のメニューを見ては、1人飲みのハードルの高さに足がすくんでは帰路に戻る。そんなことを何回か繰り返した後の、ファミマ。
朝も飲み物を買ったここに、結局寄ってしまう。そんな自分が、恥ずかしいような、誇らしいような気持ちで店内に入る。

つまみを買おうとお惣菜コーナーへ向かうと、そこには少し茶髪がかった、仕事終わりらしきOLが1人。
こちらが視野に入るか入らないかくらいで颯爽と飲み物売り場の方へ行ってしまったその女性を横目に、僕は惣菜コーナーを眺める。
これもいいな、とチョリソーを手に取ったのも束の間、自分の家に電子レンジがないことを思い出す。

おつまみコーナーに向かうと、隣のアルコールエリアから迷いなく発泡酒の500を手に取ったその女性が会計に向かう。

僕は何故かその瞬間、急がなければいけない感情にかられ、つまみを適当に選び、酒も目についた物を手に取りレジに向かう。
今日も今日とて留学生バイトのワンオペのレジ、自分はその女性の後ろに並び会計を待つ。
バーコード決算に少し手間取ったあと、その女性は右手につまみ、左手にお酒を持ちながら足早に店内を去る。
自分も会計をし、1番早い決済手段のPASMOでレシートをもらわず店内をでる。
視野の端っこでは自分の家と同じ方向に店を出た気がする。
そう思い店を出ると、そこにはもうその女性はいない。

後ろを振り返っても、いない。
大学生が他愛もなくダベリ歩きしているだけだ。

謎の喪失感に思わず僕は、呟く。
「クリアアサヒと、、チャンジャ。」

そう。これは僕がここから毎日ファミマに通うようになる物語である。

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