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ポコポコ星人とシチュー



 ポコポコ星人がスプーンでシチューの皿をかちかちんと鳴らした。
「だめだよ、お行儀の悪い」私の注意にポコポコ星人は何も云わず、スプーンを置いて悲しそうに顔を手で覆った。
 夕飯を摂り終え、窓の外を見やった。スケトットは弱い風に落ち葉が舞うのを見つめている。丸い木枠に繰り抜かれた風景は冷たい色を帯びて、わずかに残る街の色と混ざって絵のように完成した。
 風に揺れる枯れ木と砂、赤錆のついた手摺り、道路を横切る猫、からす、捨てられた花束、クラクションのパッパッという短い音、音、……
 かちかちん。
 ポコポコ星人が皿を鳴らしていた。いけないよ、と叱られるのを察してか、黙ってスプーンを置いて、椅子から降りると膝を抱えてうずくまった。

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