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でっかい冬虫夏草

 向こうの星にあるのは小さくて丸いきのこの星です。星の名前は、忘れました。ただそこは誰もいない、暗くじめじめした星であります。私らが行った時は暗い夕暮れ時で、わさわさした苔の岩岩の脇やら背の低い木の根元に、柄の丸っこいきのこが点々と生えているのでした。きのこは見境なく生えます。岩や根っこに限りません。これをご覧なさい、その星から持ち帰った盾です。この星にもある程度の文明があったのでしょう、重たく立派な盾です。しかし真ん中に嵌め込まれた宝石を除けば、もう盾の表面ほとんどをきのこが覆い尽くしています。
 おそろしいことですが事実なのです。このきのこというのはあらゆるところ、見境なく菌糸を伸ばすのです。
 これほどまでにきのこの力が強いのは、ダイダラナナフシやダイダラホシバチなどの、巨大昆虫の存在が上がるでしょう。この星をきのこが支配する前は、先にあげた大きな虫らが支配者でした。彼らは山よりも大きな体でその星を闊歩していましたが、ある時を境に支配者たちはきのこに体を乗っ取られ、外殻を残したまま巨大な冬虫夏草となってしまったのです。そうなってからはもう止まりません、冬虫夏草の菌糸に星ごと乗っ取られてしまったのです。

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