R5予備論文 倒産法

<コメント>
・時間が押して設問2が少し雑になりました。

<再現答案>
第1設問1
1 小問(1)
(1)仕入先20社がAに対して有する債権は「再生手続開始前の原因に基づいて発生した財産上の請求権」(民事再生法(以下略)84条1項)だから再生債権にあたる。再生債権は個別行使が禁止され(85条1項)、再生債権は再生計画(154条1項)によって権利変更(179条1項)された範囲内で、再生計画の遂行(186条1項)によって回収するのが原則である。
(2)本問は金額不明であるから85条5項前段の「少額」にあたるか判断できない。よって同項前段の早期弁済はできない。また、取引継続の必要性の高い先ではないから、85条5項後段による早期弁済もできない。
(3)以上よりAは仕入先20社に対して未払代金を約定通りに支払うことができない。
2 小問(2)
(1)クーポン券は学生服の仕立て直しやワイシャツの購入に金券として利用できるから「財産上の請求権」にあたる。そしてクーポン券は「再生手続の開始前の原因」にもとづいて発生している。よってクーポン券の保有者は再生債権者にあたる。よって、クーポン券の保有者は個別に権利行使できないのが原則である。
(2)そこで、A社は85条5項前段により、クーポン券の保有者に対して早期弁済することはできないか。同項前段の趣旨は、円滑な再生手続の実現にある。
本問では、クーポン券が使用できない場合には、店舗での混乱も予想される状況であったため、早期弁済により再生手続の円滑化を図る必要があるといえる。また、再生計画の可決は債権者の頭数が要件となっているところ(172条の3)、クーポン券保有者は300名もいるため、これらを削減して再生手続きの円滑化を図る必要がある。
そして、クーポンの額面は1000円であり、最大のクーポン保有者でも1万円であるから、「少額」にあたる。
(3)以上より、A社は85条5項前段により、クーポン券を使用させることができる。
3 小問(3)
(1)Dらの未払委託料は、「再生手続開始前の原因に基づいて発生した財産上の請求権」だから再生債権にあたる。よって、個別に権利行使できないのが原則である。
(2)そこで、A社は85条5項後段により、Dらに早期弁済することはできないか。
この点、同項後段の趣旨は事業再生に不可欠な取引先に対して早期弁済をすることによって、取引の継続を維持し、もって事業再生を図る点にある。一方、一部の債権者への弁済は債権者平等の原則に反する(155条1項)。
そこで、早期弁済することにより総債権者が受ける利益と不平等による不利益の利益衡量により同項後段の適用可否を決すべきである。(そのため、同項後段の「少額」は相対的に決することになる。)
(3)本問では、Dらは技術の高さから早期に代替先を確保するのが難しい委託先であり、顧客層の維持のためにも取引を維持する必要がある。とすると、Dらとの取引を維持しなければ事業再生が立ち行かなくなるから、早期弁済することによる総債権者の利益が不平等による不利益よりも大きいといえる。よって、85条5項後段による早期弁済が認められる。
(4)以上より、AはDらに対して未払委託料を約定期限までに支払うことができる。
第2設問2
1再生計画によらずに事業譲渡を行うには42条1項に基づく許可を得る必要がある。本問では、再生計画による事業譲渡を行った場合事業価値の劣化により譲渡代金の低下やそれに伴う弁済率の低下も予想されたから、「事業の再生のために必要」にあたる。よって、同項の許可を得る事ができる。
2そして、事業譲渡は株主総会の特別決議が必要である。しかし、持分比率40%を保有するCが事業譲渡に反対をしているため、特別決議を成立させることは困難である。そこで、43条1項による裁判所の代替許可を得ることが考えられる。
同条の趣旨は、事業譲渡は会社に重大な影響を与えるため、本来的には株主の決議が必要であるが、債務超過の場合には株主の実質的な持分はゼロであることから、事業再生の必要性を優先した点にある。
本問ではAは債務超過の状態にある。そして、上記1のとおり再生計画によらない事業譲渡は「事業の継続のために必要」といえる。よって、43条1項による代替許可を得ることができる。
以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?