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塞ぐ10話

店員:今日はどんな風にしますか?

和:ん〜とにかくかっこよくしてください

めっちゃ大雑把だ

店員:OKです

OKなんだ

和:よろしくお願いしまーす

そういってソファに向かう和

○:よろしくお願いします

店員:とりあえず髪の毛洗います

そう

意を決して向かった場所は美容院だ

中学校を卒業してからは和と同じ美容院に来ているのだが、軽く整えてもらう程度でしっかりと切ってもらったことは無い

美容院は妙に洒落てて落ち着かなくて嫌いだ

店員:前髪はどうしますか?

○:目にかからないくらいで

店員:かしこまりました

正直髪の毛を切るのが不安だ

まぶたの肌あれが露出してしまうし、何より髪の毛を切ったことで悪目立ちしてしまうことがとても怖い

そんなことを言っていたらいつまでたっても前に進めないから今日はとりあえず流れに身を任せることにした

店員:セットしていきますか?

○:家に帰るだけなのでだいじょ、、

和:お願いします

断ろうとしていたところに横から和が返事をした

○:帰るだけだしいいだろ

和:ダメ!折角なんだからしてもらわないと

○:なんで?

和:折角なんだからしてもらわないと

僕が喋ってるのは村のNPCなのかもしれない

○:じゃあお願いします

店員:かしこまりました

店員さんは軽く笑顔を作ってからセットを開始した

……

店員:こんな感じでどうですか?

○:ありがとうございました

毎回思うがこれ聞かれた時にダメでも嫌ですって言える人なんていないだろうとおもう

今回は要望通りに短くさっぱりして貰えたので満足だ

和:やっぱり短くても似合うね

いい感じと親指をたててそう言ってきた

○:ありがと

和:学校に行くのが楽しみだね

○:全く

和:なんで?!

○:普通髪の毛切った次の日はどこにも行きたくなくなるだろ

和:お兄ちゃんおかしいよ

そう言って呆れた顔を作る和

○:まぁそうだな

和:うん

笑って手を握ってくる和

○:なんで手を繋ぐ?

和:なんでも

嬉しそうにニコニコしている

こういうのを許してしまう自分は妹に甘いのだと思う

それでも今のこの時間も悪くわないと思った

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○:行きたくないなぁ、、

和:お母さーん。お兄ちゃんが学校サボろうとしてる〜

母:恥ずかしがらずに行きなさい。ねっお父さん

父:そうだぞ〜

○:わかってるけど、、

やっぱり学校に行きたくない

陰口を言われる可能性があるからとかそういうことよりも、目立ってしまうことがとても嫌だ

和:じゃあ私が一緒に行ってあげるよ

ここにも「じゃあ」の使い方が間違っている人がいる

○:「じゃあ」ってなんだよ

和:だって恥ずかしいんでしょ?人に見られるの

○:そうだけど

和:私と一緒に行けばそこまで恥ずかしくはないでしょ?


良いこと思いついたふうに言っているが高校生にもなって妹と一緒に学校に行っている方が恥ずかしい

○:いや。大丈夫

和:大丈夫じゃない

強引すぎる

○:一人で行くよ

和:ダメ〜。もう2人には言ってあるから行くよ

そう言って強引に手を引っ張られ学校に向かった

○:2人って誰?

和:私の友達!

○:聞いてない

和:言ってないも〜ん笑

こういうところが兄弟だなと思った

和:あっいた!お〜い👋

そう言って立っている2人組に手を振る和

和:おはよう。ごめんちょっと遅れた

?:おはよう。全然いいよ〜

?:そうそう。それよりその人がお兄さん?

和:そうだよ!。はい自己紹介して!

まるでお母さんだ

○:和の兄の○○です。

?:あっ///。和の友達の川崎桜です

?:同じく友達の池田瑛紗です


なんというか2人とも可愛いという感じだ

和:2人ともすっごく可愛いでしょ〜

そう言って2人に抱きつく和

すごく微笑ましい状況

瑛:お兄さんすっごいかっこいいね

桜:(¨ )(·· )(¨ )(·· )

おっと

1人は距離の詰め方が尋常じゃないようだ

もう1人はこくこくと首を縦に振っている

和:でしょ〜( *¯ ꒳¯*)

妹よなぜ誇らしげなんだ

○:、、あっ、ありがとう

久しぶりに言われたその言葉に少し戸惑ってしまった

合流した後は年齢とか委員とかそういうたわいない話をしていたら学校についた

和:じゃあまた家でね

○:おう。2人とも和のことよろしくね

瑛:任せて!

桜:はい!

2人の性格もあってすぐに仲良くなれた。と思う

……

一人になると余計周りの視線が厳しく感じて

玄関から教室までの短い距離を少しだけ早歩きで歩いた

教室に着くといつもよりも人が多くて時間を確認するとだいぶ遅く着いたことに気づいた

女:ねねっあの人誰だろ

女:えっわかんない。転校生?

そんなに違うだろうか

まぁ髪の毛切ったし、目元があまり見えないように眼鏡もかけているからだいぶ印象が違うのだろう

○:はぁ、

小さくため息をついて自分の席に座った

女:えっ!?井上くんなんだ

女:全然雰囲気違うね

男:鬱陶しい前髪切ったんだな

男:何かあったのかな

そういう声が聞こえた気がしてイヤホンをつけ机に伏せた

田:早くお昼来ないかな〜

さ:流石に早くない?笑

田:あっ○○くん寝てるよ。起こそ起こそ

さ:ちょっと真佑、、

田:おーい。もうそろHRだぞ〜

肩を揺さぶられ目が覚めた

どうやら寝ていたらしい

○:、、あっ、、ありがとう

田&さ:え?!、、、

2人とも驚いて目を見開いている

そこで自分のねぼけていた脳内がフル稼働し始めた

田:髪の毛切ったんだ!!!

机に手を付き前のめりで聞いてくる田村さん

○:ち、近い、、、

田:あっ///ごめん


そう言って自分の席に座る

田:髪の毛その方がいいよ

1呼吸置いてからそう言われた

○:あ〜ありがとう

さ:、、、

遠藤さんの方は立ったまま固まって動き出さない

それはそうだ

今まで一緒にバイトをしていた人が今目の前にいるのだから

○:ごめん。今まで嘘ついてた感じになってて、、

そういうとハッとして我に帰ってペコペコと頭を下げている

さ:まさか井上くんが○○くんだったなんて、、

○:いやっホントにごめん

田:え?何の話?

不思議そうに首を傾げている田村さんに遠藤さんがバイト先のことを説明した

田:2人とも一緒にバイトしてたんだ

さ:うん、、

田:それでさくは気づかなかったんだね

そう言われて遠藤さんは俯きがちになった

○:バイト中は前髪上げてるし雰囲気違うと思うから仕方ないよ

田:そうなんだね

納得したらしくうなづいている

田:でもなんで髪の毛切ったの?

当然の疑問だ

○:まぁ〜半強制的に切られた

田:なにそれ笑

まぁそうなるだろう

翔:おっすー。おっほんとに髪の毛切ったんだな笑

そう言って頭をクシャクシャにしてくる

○:触るな

翔:相変わらず俺に対してあたりつぇーよ笑

ケラケラと笑っている翔太を見るとこちらまで笑えてくる

そう言ってくれた翔太のおかげでいつの間にか恥ずかしいという感情が薄れていたことに気づくことすら出来なかった

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田:今日も終わったね〜

さ:だね〜


今日も長い一日が終わった

最初は最悪の気分だったが案外いつもと変わらない日々が過ぎ、明日からは多少気が楽になる気がした

田:さくちゃん。遊びに行こうよ

翔:おっ!いいなぁ

当たり前のように会話に横入りする翔太

流石はコミュ力お化けだ

田:今日は部活休みなの?

翔:いや〜普通にあるよ

田:なんで行く感出すの笑

当たり前の疑問である

翔:○○が代わりに行くから

○:なんでや

当然の疑問だ

田:おっ!いいねぇ〜

あれ?これ行く流れになってる?

さ:○○くん予定大丈夫?

○:、、う、うん

学校でこの呼び方されるの慣れないとな

さ:やった(ボソッ)

遠藤さんは小さくガッツポーズをとった

田:よし!じゃあ行くぞーー、

相変わらずハイテンションだ

○:ごめん、図書室だけ行ってきていい?

田:もち!さくちゃんとここで待ってるね

そう言ってヒラヒラと手を振る2人を尻目に図書室に向かった

……

○:この本お願いします

久:はい

 ○:、、、

久:、、、


こちらの顔を見ている

どうやら気づいてなさげだ

○:久保先輩。○○です

久:、、、知ってる

○:じゃあなんで何も言わないんですか?

久:逆に何か言って欲しいの?

ちょっと不満げだ

○:いや別に。次は先輩の番ですから

久:、、知ってる、、、なんで先に一歩進んでんだ(ボソッ)

確かに

先輩が先に進むはずだった

○:順番は関係ありませんよ

久:、、そのうちね

○:まぁ気長に待ちます

久:わかったからさっさと帰れ

○:はいはい。仕事頑張ってください

先輩にそう告げて教室に向かった

窓から見える外の風景はいつもよりも澄んでいるように見えて、まるで今の自分の気持ちとリンクしているようだった

教室に向かう廊下で人の視線に少しだけ意識が向いたが気のせいだと自分に言い聞かせた


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(??)

私には好きな人がいた

中学校の頃彼と出会い、彼の容姿に惹かれた

もちろん性格も良くて教室の隅にいつもいる私にも優しく、クラスの中心人物だった

ある日

彼がいじめをうけるようになった

最初はクラスの一部と喧嘩をしているような感じだった

それが気づいたらクラスの全員になっていて

孤立していった

ずっと助けたかった

それでも、、動くことが出来なかった

彼の傍に行けば私も虐められるかもしれないと思ったからだ

そして彼は居なくなった

彼が転校すると「誰々が悪いだの」「自分は関わっていないだの」そんな言葉が教室を埋めつくした

最悪の気分だった

それでも人を責めることが出来なかったのは自分にも非があると思ったからだった

いじめをしていた人も、いじめの存在に気づいていてもただ見ていただけの人も、全員悪いと思ったからだ

それからいじめは亡くなった

私は高校生になる時変わることを決意した

ずっとつけていた眼鏡を外しみんなに好かれるように振る舞った

彼のようになれるように、、、、




…to be continued


(あとがき)
塞ぐ10話いかがだったでしょうか
髪の毛を切った○○は今後どのような形でみんなと関わっていくんでしょうね。私気になります。
後輩ちゃん達も今後登場してくると思うので楽しみにしていてください!
??の正体は楽しみにしてて欲しいですね。その子との再開で一旦話区切るつもりです。
最後まで楽しんでいただけると幸いです
それではまた

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