雨と夢と

雨音を聞きながら眠りについたのは、覚えている。

気付くとあの女と一緒にいた。

「どうして、あの時?」

女の唇が動く。
その目が濡れているのが分かる。

「ああするのが君の為だと思った。
 最後のチャンスだって言ったろ?」

「でもさ、、
 傍に居てほしかった。
 隣で支えてほしかった。」

どこかで、こう言うよなあと冷めた自分がいる。

「あのままじゃ君は失敗したよ。
 そして後悔した。
 だって甘えるだろ?あのままじゃ。」

「傷付いたままで、、、
 一人ぼっちで頑張ったんだよ!」

「上手くいったなら、良かった。
 あの時の自分が間違って無かった気になるよ。」

「だったら、、」

「だったら?」

「帰って来て。」

「帰る?」

「私を嫌いになったんじゃないんでしょ?」

「俺は、、今でも、、」

女の手が俺の手に触った。

そこで目が覚めた。
その手の冷たい感触が残っている様な気がする。

どうして今更。

素直にそう思った。
もう4年も前の事だ。
別れた頃も、こんな夢は見なかったのに。

そうか、、風の噂に彼女が夢を叶えられそうだと聞いたんだ。

だからか?
古い感傷に触ったのか?

彼女を嫌いで離れたんじゃなかった。
ただ人生で最後の賭けだと語る姿に
このままじゃ、また泣くと思った。

だから悪い男を演じた。
そして離れた。

いや、、それは本当だったか?
彼女の直向きな目が俺を見ていない気がした。
それは寂しさだった気がする。

自分の寂しさを嫌って
彼女に寂しさを渡したのかもしれない。 

ただ逃げただけ。
今でも愛しているのかも?
再会すれば、、また。

そう考える男って、ズルいよな。
胸の中に言葉に出来ない熱が湧き上がっている。



ドスン!

「うっ。」

腹に手が落ちてきた。
寝相が悪いから、たまに被害にあう。
ただ、それも。

漫画みたいに、むにゃむにゃ言ってる。
きっと夢の中ではちゃんと話してるんだろう。
落ちてきた手が不意に弄る。
何を探してるんだか。

その手をそっと自分の手で掴む。
安心したみたいに手が掴み返してくる。
ふんわりと、ゆっくりと。

その手には確かに暖かさがある。

過去は過去でいい。

確かなのはいつも今だけだ。
終わりゆく今日と最新の明日があればそれでいい。

また眠りにつこう。
この温もりがあれば
もう迷いはしないだろう。

雨はまだ降ってるみたいだ。
もう少しだけ、しっかりと今の彼女を抱きしめる様にした。


to be everyday life


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