雪が降れば思い出すとちくら商店の有り難みと買えなかった本たち。

今の時代はネット社会なんていうくらいだから、何だって調べられる。

昔はのう〜ゴホ、ゴホっ、なんて話すくらいには前になった昭和ってのは、女性の身体の男との違いなんて、専用の本でしか分からなかったのよ。

で、少年なんてのは行動範囲が狭いから皆んな行くトコは同じな訳。

そんな専門誌を買ってるのを見られたら大変💦
田舎町なんて、そんなもんだよ(笑)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

とちくら商店は基本的には文房具の店だったんだけど、半分は本屋だった。

僕は学校の帰りにそこに寄り、色んな表紙を眺めたり気になる文庫を試し読みしたりした。

漫画は買えなかったけど、色々とそこで知った。

買えはしないけど刺激的な表紙だって、目に焼き付けようと毎日見つめたもんだよ(笑)

北海道の冬は学校に行くだけで膝まで雪に埋まる。
おまけに柔道部で帰りは疲れ果ててたから、意外と遭難するんじゃないかと思ってた。

ホワイトアウトってほどじゃなくても、不意に光るものがあったら、それは車のライトだから危ないっちゃあ危なかった。

歩道も車道もただただ白い中、僕たちはとちくら商店を目指したもんだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今思うと小さなコンビニみたいだったなあ。
文房具屋で本屋で、いつの間にか駄菓子が売ってたりした。

冬になると中華まんがあったんだよ!
部活帰りの僕たちは暖かい肉まんと自販機の缶コーヒーを目指して危険な帰り道を旅していたのさ。

あの頃の景色、色合い、あの感覚は本当に忘れられないんだ。あの光の具合だけは東京には無い。

淡い、ぼやけるように揺れて見える街灯。
故郷の夕暮れの色は唯一無二に思える。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな色合いが今の僕の根幹にある。
表現し難いセンス。
あそこから生まれ出でた想いたち。
そして
とちくら商店で知った漫画や小説。

考えてみたら
好きな作品とは皆んな、とちくら商店で出会った。
知らなかった世界を、とちくら商店で知った。
その新しさを淡い光が育ててくれた。

僕の創作はあの風景から始まった。
今はもう無くなったお店なんだけど、故郷に帰るとついまた行ってみたくなるんだ。

また新しい本があるかもしれない。
また目に焼き付けたい表紙があるかもしれない。
そんな気がするんだ。

不思議と今でもあのお店は心の中に生きてる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今、自分が拙くても小説みたいな物を書いてるじゃない?

時代は流れて本を買わなくても知れる事ばかりだけどさあー。

僕は誰かの、とちくら商店になりたいなあ。
雪を見るとあの頃の事が思い出される。
あの気持ち、あの光、あの驚き。

僕は小さな店でいいんだ。
誰かがワクワクして
目を輝かせてくれたら。
ニコニコしながら自分なりに考えてくれたら。
また新しい何かが生まれたら。

そんな事が楽しくて仕方ないんだ!
と久しぶりに東京の名残り雪を見ながら
ふと考えたんだよ。

イマジネーションは止まらないね。


マブ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?