見出し画像

Tate Britain、Joseph Mallord William Turner、“雨、蒸気、スピード-グレート・ウェスタン鉄道”  (1844年)

ターナーの代表作の一つだが、まず1944年に描かれた事実に注目したい。題名となっているグレート・ウェスタン鉄道の設立は1933年ということで、設立から10年後に描かれた作品である。モチーフとなっているファイアーフライ型蒸気機関車は1940年に導入されている。つまり最新の蒸気機関車がこの絵のモチーフということだ。この時代、フランスではアングルを中心とする新古典主義とロマン主義のドラクロワが対峙していたが、モチーフの斬新さ、時代性という意味でターナーのこの絵のが際立った革新性を見せる。
空気遠近法、輪郭の処理など古典的なヨーロッパ絵画の技法を踏襲しているものの、マチエールの成り立ちは同時期のものよりむしろモネの晩年の睡蓮の連作を想起させる。モネが睡蓮の連作を開始したのが1890年台後半ということを考えれば、その手法においてもその革新性が際立つ。
普仏戦争の戦火を逃れ、イギリスに滞在したモネはこの時期ターナーの絵に触れ、影響を受けたことが知られている。時代を先取りしたターナーの革新性は30年後、フランスの印象主義に引き継がれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?