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「リンカーン・ハイウェイ」

たった10日間のエメットとビリーの兄弟、それに絡むダチェスとウーリーの濃密な物語。所謂ロードノベルってやつです。

1954年。サライナの更生施設から出所してきたエメットは、弟の待つネブラスカへと帰ってきた。亡くなった父の家を売り、母親の向かったと思われるサンフランシスコへと愛車のスチュードベーカーで旅立つつもりが、更生施設から抜け出してきたダチェスとウーリーに翻弄される羽目に陥り、彼らを追ってニューヨークへと向かうことになる。途中、二人は多彩な出会いを経験する。
冷静で考え深いエメット、聡明で本を手放さないビリー、自由奔放なダチェス、WASPの生まれで繊細なウーリー。それぞれがたった十日間のうちに見せる活き活きとした輝きよ。どうして更生施設へと送られたか少しづつ明らかになっていくが、その理由が見えてくるころには、読み始めの印象ががらりと変わることに驚くに違いない。

途中のユリシーズの逸話がいい。アバーナシー教授が最高にいい。(まさか本当に出会えるとは、てやつだ)

そして一気に不穏なラストへ。描かれていない先へと放り出されて、どう思ったか、これは読んだ人と語り合いたい。どうなったよ?!ウーリー、逃げ切りか?!ダチェスは?!エメットとビリーの兄弟は、無事に本来の目的を果たせるのか?!

「リンカーン・ハイウェイ」
エイモア・トールズ(宇佐川晶子訳)早川書房

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