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【台湾】 台湾廟のお香売り

小さな廟があった。台湾の街のどこにでもある小さな廟。何の神だろうか。祀られた神々に囲まれるとまずその大きさに圧倒され、顔立ちに畏れを抱く。艶のある真黒い顔。髪の様に長い睫毛。ある神は舌を突き出して参拝者を見下ろしている。線香が焚かれた狭い廟内。信仰の唄に耳を傾けていると知らない内に意識は異世界へと飛んでしまいそうになる。その廟の奥から外の通りをぼんやりと眺めている男がいた。廟の管理をする様になった切っ掛けを問うと、男は縁だと言う。「仕事?線香を売ることかな」「他には?」と聞くと「他にはもう無いよ」と優しく笑った。(shelter notebook 付録:習作の記憶より)


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