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【ピーマングルメンタリー オモマズい店】東海林さだお風エッセイ
再びPディレクターがその店に訪れたのは前回の訪問からひと月あまりたった時だった。
初回の放送の反響が凄く、放送直後は長蛇の列でお店はてんやわんやだった。
店主が悲鳴を上げているのを聞きつけPディレクターが助っ人として手伝いに度々来ている。
相変わらずお昼時には行列が長く続いていた。
Pディレクターは教えて貰ったちゃんぽんの作り方をスマホの動画を見ながら復習しマスターしていた。
このお店のちゃんぽんは普通盛りが麺二玉分あり具材も大量に載っている。
丼もそれに比例し大きい。
大盛りを頼もうものならバケツの様に大きい丼で出てくる。
ただ残念なことに薄味だ。
これは大将が糖尿病のため味覚が少し若い頃に比べて変化しているせいだ。
常連客はそれを承知で来ているのだ。なのでテーブルの塩胡椒醤油酢砂糖を無手勝流に足して各自が好みの味に仕上げて行く。
またこのお店は自家製の高菜漬けとちゃんぽん屋には珍しいマー油も置いてありこれも取り放題だ。
実はこの高菜漬けとマー油のファンが多く常連客はこれ目当てでやって来ている
店内外には店主が趣味で集めた大小様々なタヌキの置物が所狭しと置いてあり、別名「タヌキの舘」と呼ばれている。
道路沿いに置いてあるので一見さんは売り物かと勘違いするのだ。
何故か店主はタヌキが大好きで自分はタヌキの生まれ変わりだと信じて疑わないでいる。
顔もどことなくタヌキ顔だ。
そんな変わり者の店主にPディレクターはとても興味が湧きこの店を取材する事になったのだが、ミイラ取りがミイラになるかの様に感化され自分もタヌキ好きになった。
「大将、今日はキャベツがいつもより少ないんじゃないの」
Pディレクターはいつもは大量にあるキャベツの入ったダンボール箱が少ない事に気付く。
「あいやーチョイと仕入れの数間違えてな。その変わりと言っちゃ何だがピーマンはあるべ」
店主はキャベツとピーマンの仕入れの数を間違って発注していたのだ。
「もうこうなったらキャベツの代わりにピーマン入れるしかないべ」
店主は下を向き申し訳無さそうにつぶやく。
「Pさんもピーマン手伝って切ってくれ」
「あ、ああ。でもピーマンばっかりじゃあねえ」
「なあにその分モヤシ追加するべ」
出来上がったちゃんぽんは緑色のピーマンがやたら目立つ。
客が、
「おい大将、なんじゃこのちゃんぽんは。ピーマンばっかりじゃあねえか」
「すまんこってす。その代わりモヤシとネギ追加で入れてあっから」
客は大量のピーマンが入ったちゃんぽんを仕方なく食べるのだった。
おしまい
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タイトル落ちでした。
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