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【ホタテラーメンに成りたかった僕】⑤

【ホタテラーメンに成りたかった僕】⑤

お兄ちゃん達と一緒に富山ブラックを食べられた事は僕にとっての一生の記念でありターニングポイントだ。

この店で見たもの感じたこと全てが新鮮で学びが多かった。

濃口醤油と黒コショウのガツンとパンチのあるラーメンはラーメン会の金星の様に光輝く存在なんだと思う。

お兄ちゃん達に負けじと僕もゴクンゴクンとスープを飲み干した。
「ほう。なかなかおめーもやるじゃないか。さってこれからどうすっかだけどとりあえず車に戻って一眠りすっか」
「はい」

確かにお腹一杯だし肉体労働で疲れて眠くなって来た。後のことは寝てから考えよう。
再びトラックに乗り込み直ぐに毛布にくるまって眠りについた。

どれくらい寝ただろう、だいぶ太陽が傾いていた。お兄ちゃんも目を覚ます。

「ふぁ〜よく寝た。さて戻って洗車すっか。お前も洗車手伝ってくれ」
「はい」

勢いに押されてつい返事をしている。
「とりあえず今日の仕事はこれで終わりだけどお前どうする。洗車終わったら一緒に飯でも食うか」
「ええそうですね。だいぶ遅くなるみたいだし今日はそうしようかな」
「じゃあ決まりだ。そうだな晩飯はやっぱり、《やつはし》に行くか。あそこのホタルイカの沖漬けとバイ貝は食べとかないとな。あと、鮎の塩焼きもあれば頼もう。運が良ければホタテもあるかもよ」

耳慣れないメニューばかりだ。
そもそもホタルイカが何なのか知らないし冲漬けってどういう料理なのだろう。それにホタテがあるかもしれないなんて。
「ホタテがあると良いな」
「ヨシじゃあ決まりだ。その前に急いで洗車だ」
お兄ちゃんは大きくハンドルを左に切り直線道路に出るとエンジンを吹かした。
「洗車終わったらシャワー浴びて着替えて行くから」
「はい」
いよいよその後ホタテに会えるかもしれない。

洗車場はとても広かった。
お兄ちゃんは器用にマシンガンのようなノズルの付いたホースを操り上下左右に水流をトラックに当てていく。
見る間に驚く程に汚れが落ちていく。
実に便利な機械があるもんだと関心した。

僕は車内のマット等を洗った。
マットはそんなに汚れては無かった。
大きなトラックだからもっと時間がかかるのかと思いきや意外に早く終わり、お兄ちゃんは併設のシャワールームでシャワーを浴び普段着に着替えた。
僕はトラックの中でラーメン本を見ていた。
北海道のラーメン屋特集だった。
そこにはあのホタテが載っているのだった。

つづく

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