なすび

20代 女性 外れ者

なすび

20代 女性 外れ者

最近の記事

「詩」正夢

月明かりがちょうどよい夜 私は路地から道路をうかがっている 家の前にそびえたつマンションのゴミ置き場に檸檬を捨てた ポリ袋に入れて まるで遠足のおやつのように それは罠ではないけれど罠みたいなもので 引っ掛かる誰かをしゃがんで待つ 檸檬を拾ってくれた影は仏様ではなくただの人間のそれで私は「あぁ、この人が運命の人か」と落ち着き、ときめく

    • 「詩」魚

      風も波もない暗すぎる川はただのコンクリートみたい 工場の街で踏み出したつま先が沈んだ その瞬間の私の焦燥感と安堵感をあなたは夜の煙のように見逃す 何も映らない手のひらを鏡のようにしてた少女 夢日記をつけていた少女 ドッペルゲンガーに会いたがっていた少女の 願いが叶うとき 予想外だったのは魚に見つめられていたこと 軽い気持ちであなたが出した足にまんまと引っかかった私 転び、落ちきったら土竜になるかと思ってた でも違ったのね 重心移動させたら魚に見つめられた ただの人間

    「詩」正夢