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私学訪問日記【香里ヌヴェール学院中学校・高等学校】

京阪本線香里園の駅を降りて、閑静な住宅街の緩やかな坂道を少し登ると、正面に伝統的な美しさを持つ建物が見えてきます。学校とは思えぬほど美しい建物ですが、これが香里ヌヴェール学院の校舎です。

それもそのはず、この建物はかの有名な建築家アントニン・レーモンド氏が設計したもので、国の登録有形文化財にも指定されているのです。

香里ヌヴェール学院の校舎

こんな環境で毎日学んだら、さぞかし心が豊かになるだろうと羨ましく思いながら校内に入ると、池田靖章校長先生が明るく迎えてくれました。池田先生は38歳(校長就任時は34歳で全国最年少校長でした)。若くてエネルギッシュで、新しい教育の推進に並々ならぬ情熱を注いでいます。

香里ヌヴェール学院は、フランスの修道会が母体で、カトリックの人間観・世界観にもとづく教育を通して、真理を探究し、愛と奉仕と正義に生き、真に平和な世界を築くことに積極的に貢献する人間を育成することを建学の精神としています。

池田先生は、この理念を基本としながらも、「正解のない時代」といわれる今だからこそ、自分なりの信じる道を持ち、グローバルに活躍できる人を育てるための教育を推進しているといいます。

校長が若いからこそ、目先のことではなく、10年、20年先のことを真剣に考え、今できることに全力で取り組んでいるのだと思います。

関西の中堅校には珍しく、海外大学に進学する卒業生が毎年コンスタントに7〜8名います。少子化が進めば、将来日本の中堅大学の価値は確実に下がる。その中で日本の大学だけをターゲットにしていてよいのだろうか。そのような校長の考えが海外大学進学を後押ししているのでしょう。

香里ヌヴェール学院の特色の一つは課題解決型学習(=PBL)です。本校オリジナルの探究科目である「ヌヴェール科」においては、様々なPBLを実施しています。例えば、高校2年では、近隣の農園と提携して農業体験をし、自分たちで育てた米や野菜を自分たちで販売まで行うというアントレプレナー(起業家)教育を推進しています。

探究科目「ヌヴェール科」の学習風景

このような正課内のPBLだけでなく、生徒が発案して学校が認めれば課外の自主活動としてのPBLを行うことができます。プロジェクトを進めるために費用が必要な場合も、きちんと計画を申請すれば学校から予算がつきます。

生徒の発案により学校が予算を与えて取り組む自由なPBL活動は海外では当たり前なのですが、日本の学校では珍しい取り組みです。まさに主体的な学びの典型といえるでしょう。

高校1年生のあるクラスの生徒たちが、今年秋に開かれる地元のお祭りに、露店を出店したいという提案をしてきたそうです。自分たちで育てた枝豆を原料にしてジェラートを作り販売するのだそうです。レシピは地域のジェラート屋さんで研究をし、高校生が食品衛生責任者の資格まで取得して臨むそうです。

もちろん先生たちもサポートをしているのですが、生徒たちが主体的に企画し運営するプロジェクトです。成功させるためには、必要なことを自分たちで調べ、自分たちで考えて答えを出していきます。
こうした中から本当の生きる力を身につけるのでしょう。そして、現代の日本の若者に足りないチャレンジする強さや自己有用感が自然と育つのだと思います。

正解のない時代だからこそ、「何を知っているか」だけではなく「何ができるようになるか」が大事なのです。
池田校長先生の力強い言葉が、明日の日本の教育を拓くメッセージとして全国に広がってほしい。そう思いながら、歴史の重みと新しい教育実践がマリアージュした学校を後にしました。

香里ヌヴェール学院で2023年11月18日に公開授業研究会が開催されます。詳しくはこちら。

香里ヌヴェール学院:11月18日に公開授業研究会

(コアネット教育総合研究所 所長 松原和之)

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