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お茶は斜陽産業か、否か

茶農家の生産する荒茶単価は、もう何十年も前から右肩下がりです。
※荒茶とは、畑から収穫し、お茶工場で作った第一段階のお茶のことで、ここからお茶屋(茶商)さんが加工・調整をして、仕上げ茶となります。

荒茶単価の推移について時代背景から説明したいと思います。

明治~昭和には、海外輸出、主にアメリカへの輸出によって茶業は発展しました。茶農家は山を切り開き、石積みをして畑を築き、人が行けるところは何処にでもお茶を植えました。その頃は、どんなものでもお茶であれば作れば売れる時代でした。

戦争などで輸出がストップしたり、中国の緑茶が海外シェアを奪ったりして、時代が進むにつれて徐々に国内需要に切り替わっていきますが、それでも昭和の時代は、喫茶文化が身に付いており、一家団欒、ちょっと一服というのが当たり前、経済もバブルで上がり調子のイケイケ状態でした。

平成近辺でコーヒーや新しい飲料が登場したり、核家族化など人々のライフスタイルが変化していき、徐々に緑茶の消費量が減っていき、茶農家の取引する荒茶単価も下がっていきました。

静岡市の本山茶は、平成23年に福島の地震による東京電力の事故、放射能の雨により、お茶からセシウムが検出。その後、セシウムが検出されなくなるまで出荷停止状態。出荷できるようになっても、風評被害は続き、単価の低迷は更に加速していきました。

令和に入り、新型コロナで冠婚葬祭のスタイルが変わり、お茶の葬祭需要は一層減りました。また飲食業の大打撃もありました。

近年の燃油高等、インフレ、働き方改革などにより、生産者の経営を圧迫させることは勿論、取引先のお茶屋さんの経営も圧迫されてきています。

茶価が落ちていく要因は、上記のような時代背景だけではありません。

かつては、お茶は作れば作るだけ売れたため、茶園面積を拡大させ、製茶工場を大規模化させ、大人数で大量にお茶を作るようになり、それが生産過剰を生み出しています。年々、生産量は減ってきているものの、単価は下げ止まりません。

売上とは、数量×単価ですので、単価が期待できない今、あえて収穫時期を遅くして品質を落とし単価を安く抑え、収量で利益を稼ぐ茶工場もあります。または、基盤整備や機械化を進め、大規模経営をすることによって単価安でも薄利多売でやっていける茶工場もあります。日常用には、安価なお茶が好まれるため、高単価なお茶生産は需要がないんです。安くて良いお茶づくりを生産者の努力と投資で可能にしているのです。しかし、それができるのは、農地の作業性・生産性が高く機械化・基盤整備が進んだ産地だけです。山間の機械化が進まない、収量が取れない産地は高単価なお茶で勝負せざるを得ず苦戦しています。中山間地域の茶産地は、知名度、ブランドを磨き、いくらでもあるお茶の中から選ばれる綾鷹的存在になる戦いを強いられているのです。

また、かつては保存技術が低く、時間が経つと品質が落ちてしまうお茶が沢山あり、1年おきの茶に価値がありました。しかし、冷凍保存の技術が上がり、今では数年前のお茶であっても美味しく飲めるようになりました。それゆえ、お茶屋さんは在庫状況を見て、仕入れを調整するようになりました。

そうした中で、どうやって茶価が決まるかというとお茶の市場、茶市場で価格形成が成されます。

お茶時期になると毎朝、茶市場にて生産者、JAとお茶屋さんが相対取引を行います。基本的に、日に日にお茶の品質と価格は下がっていくため、その日のお茶はその日に売り切ります。しかし、大抵の場合、大規模茶工場のお茶が売れ残り、お茶屋さんと交渉して提示していた単価よりも安く取引をして捌けさせることとなります。売れ残れば、買い手市場でどんどん単価が安くなっていきます。

お茶屋さんは、高い価格帯のお茶から徐々に仕入れていくため、日々、お茶が売れ残っている状態だと「良いお茶を安く」仕入れられることになります。次の日は、その「昨日の良い安いお茶」が相対取引の交渉材料になるため、今日のお茶が良い品質であっても、昨日の価格よりも高く売れることは基本的にはありません。売れ残りが毎日続くと単価の大暴落が起こります。

恐ろしいことに、この大暴落は、相場となって、市場に上場している全てのお茶の単価に影響します。

ただし、逆も然りで、売れ残りが全くなく直ぐに売れてしまう状態であれば、単価は維持されます。

勢いのあるお茶屋さんがいれば、大量仕入れで売れ残りが起こらず業界は大きく変わるかもしれませんが、そういう起死回生の動きは現在、感じられません。

茶価が低迷すれば、当然、生産意欲は減り、品質が悪くなり、後継者も経営を継がず、産地は崩壊します。

この業界には、もはや時間はありません。
中山間地域の茶産地は、既に崩壊が始まっています。
後継者もいないし人を雇う金もない。
工場の機械が壊れれば修理もできない。
70台、80台が中心になってきて、あと10年なんて無理な話です。

方法はあるでしょうか?
色々な角度、立場からのアプローチがあるはずです。

この業界はもうバランスが崩れて、おかしなことになっています。
一度、根こそぎ、ぶっ潰さないとダメかもしれませんね…
お茶は強い植物ですから、地上部が全て無くなっても根っこの力だけで復活します。

お茶は斜陽産業か、否か


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