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⑦家出と出産準備。あるとき22歳年上の彼は、しれっと私を妊娠させた。私は20歳で彼の子を出産した。でも、娘は・・・。

私は10代の頃、集団レ〇プされた。自殺未遂を繰り返していた。搬送先の病院はたいてい同じ。気づいたら救命救急の医師と交際していた。22歳も年上だった。私は、彼の愛で再生していく。彼は私の人生において、最大の恩人であり、最愛の人。私は彼のことが忘れられない。特に、彼との夜を。私にとってはリハビリだった。

彼は、子育てがリハビリ完了のきっかけになると考えたようだ。
22歳年上の彼は、しれっと笑顔で私を妊娠させた。そして、私が20歳になったタイミングで出産できるようにした理由が分かった。

あるとき22歳年上の彼は満面の笑みで、臨月の私にこう言った。
「少し遅くなったけど、お誕生日おめでとう。赤ちゃんも、もうすぐ生まれるね。はい、これプレゼント」
「ありがとう。プレゼントなんていいのに。」
紙袋の中に、何やら鍵と分厚い書類が入ってた。
「・・・ん?」
「ここにサインして」
「どういうこと?」
「愛の名義にするから」 マンションの契約書だった。
「えっ!! 受け取れないよ!」
「でも赤ちゃんと住む場所、必要でしょ? お金、払っちゃったし」
「えーーー! せめて相談してからにして欲しかったよ」
「相談したら反対するでしょ?」
「そんなの当たり前だよ」

こんなに良くしてもらえる価値が、私にあるとは思えなかった。

彼は、いつも笑顔。そして用意周到。私にナイショで私の実印も作っていた。不動産の売買契約に実印が必要らしい。
「せっかく用意してもらったけど、サインなんて書けないよ。自分の名義にすればいいのに」
「それじゃ意味ないでしょ。僕が死んだ後、路頭に迷うじゃん」
「えーー。まだ当分、死なないでしょ?」
「そうだけど。僕、年上だし」
「・・・ま、そうだね。かなり年上だよね」
「しょうがないな。じゃあ僕が代筆しておくよ」
え?こんな大きな買い物を、代筆でOKなの?と思った。私には、さっぱり分からなかった。当時、私は20歳だったけど、まだ高校生だった。不登校になり留年していた。世間知らずだった。

集団レ〇〇された苦しみや絶望感を、両親に理解してもらえなかった。私は家出して、22歳年上の彼と暮らし始めていた。そのまま、実家には戻らなかった。身内とは疎遠になった。

今でもフラッシュバックする。
「どうして逃げなかったの?!」
「どうして助けを呼ばなかったの?!」
母親に号泣されながら言われた。そっか、逃げれなかった私がいけないんだね。でも、相手は私より体格も大きい男子たち3人だよ。私だって逃げれるものなら逃げたかったよ。どうすれば逃げられたの? 首を絞められて、声を出せなかったよ。どうすれば、助けを呼べたの?
母親は集団レ〇〇された娘を世間から隠すことに必死だった。

父親との会話もひどかった。
「何回、自殺未遂を繰り返してる。そんなことして何になる?!」
「よりによって何で、そんな男と付き合ってる。別れろ!」
「おまえは頭が狂ってる」
「あぁ そうだよ。狂ってるよ。でも狂ったのは私のせいじゃない」
私には生きるために、22歳年上の彼が必要だった。でも、両親は交際に猛反対した。

両親なりに私を守ろうとしていたのだろうと、今は思うけど。きっと、両親も集団レ〇〇された娘に、どう接すればいいのか分からなかったのだろうね。
カウンセラーは「秘密は守る」と言いながら、話したことを両親に筒抜けにしていた。私は、カウンセリングも受けなくなった。

信頼できるのは、22歳年上の彼だけだった。

彼と、ベビーグッズを買いに行った。ベビーバス、衣類、ミルク、哺乳瓶、ミルトン、ベビーカー・・・。けっこう高額なんだな、と思った。子育てするって大変なんだね。具体的に、どう大変なのか少しだけ分かった気がした。育児に関する知識なんて、まったくなかったし、彼以外に相談できそうな人もいなかった。育児に関する書籍もいくつか購入して熱心に読んだ。特に児童心理学に関すること、自己肯定感がいかに大切か、というような内容の書籍に夢中になった。難解だったのは予防接種に関することだった。何度も読み直した。

引越しの荷物が搬入されて、ひと段落ついたとき、玄関で立ち止まった。玄関から廊下を見て、妙に緊張した。
「どうしたの?」
「・・・・・(深呼吸)」
「too good to be true ?」
「Yes」
「Those who are afraid of happiness cannot be happy. It's a proverb frow some country.」
「ん? それは、どういう意味?」
「ことわざだよ『幸せを恐れる者は幸せになれない』」
「ふ~ん。そんなのあるんだ。私には、もったいなくて怖いよ。」
「大丈夫。僕がついてる」
「私、もうすぐ出産するんだよね。」
「大丈夫。愛は、最高で最強のママになれるよ。」
「・・・(深呼吸)」
「僕、出産に立ち会うよ。」
タイミング、合えばいいけど、と思いながら頷いた。不安な私に「大丈夫」と彼がキスをする。 彼は「毎日ここに来る」と意気込んでいたけど、たぶん無理。彼は既婚者だった。当直もある。彼が、私と生まれてくる赤ちゃんのために用意してくれたマンションに、時々通ってくることになる。

「大丈夫。愛は、最高で最強のママになれるよ」
彼が言った言葉を、繰り返し自分に言い聞かせる。

ちゃんと母親になれるか多いに不安もあった。でも愛してやまない彼の子だから、とても愛おしかった。お腹の中で赤ちゃんが動くと、本当に感動した。20歳の誕生日を過ぎたとき出産した。でも、娘は・・・。

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