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夜の訪問者 1

それは、何の前触れもなくやってきた。

深夜、家のドアを叩く音がする。時計を見ると午前2時。不審に思いながらも、私はベッドから抜け出し、廊下を静かに歩きながらドアに近づいた。心臓の鼓動が速まるのを感じながら、ドアのスコープを覗いてみたが、外は真っ暗で何も見えない。ためらいながらも、ドアをゆっくりと開けてみると、そこには誰もいなかった。ただ、冷たい風が吹き込んできただけだった。その瞬間、背筋が凍りつくような感覚に襲われた。

ふと足元を見ると、そこには泥で汚れた小さな足跡が続いていた。足跡は玄関から家の中に続いており、リビングルームの方へと消えていた。不安な気持ちが募る中、私は足跡をたどってリビングルームへ向かった。部屋に入ると、薄暗い光の中で何かが動いたような気がした。

「誰かいるのか?」声を震わせながら尋ねてみたが、返事はなかった。ただ、窓のカーテンがゆらゆらと揺れているだけだった。窓が開いているのかと確認すると、鍵はしっかりとかかっていた。さらに不安が募り、私は部屋中をくまなく探したが、誰もいない。足跡はリビングで途切れていた。

気味の悪さを感じながらも、もう一度玄関に戻ると、今度は玄関の外に何かが置かれているのに気づいた。それは、古びた人形だった。人形は泥で汚れており、その目は不気味なほどに無表情でこちらを見つめていた。私はその人形を拾い上げ、家の中に持ち込むことにした。

その夜、眠れぬままベッドに横たわっていると、再びドアを叩く音が聞こえてきた。今度は連続して強く叩かれている。恐怖で体が動かなくなりそうだったが、再びドアに向かい、スコープを覗いた。しかし、やはり何も見えない。

ドアを開ける勇気が出ず、その場で立ち尽くしていると、背後から冷たい風が吹き抜けた。振り返ると、リビングの方からかすかな声が聞こえてくる。それは子供のような声で、何かをささやいているようだった。

恐る恐るリビングに向かうと、人形が置いてあったテーブルの上に移動していた。その人形は、今度は手に何かを持っているように見えた。近づいてみると、それは小さな紙片で、そこには「もうすぐ会えるね」と書かれていた。

その瞬間、背後から激しい音が響き渡り、私は振り返った。玄関のドアが勢いよく開き、冷たい風が吹き込んできた。誰かが入ってきたのかと心臓が止まりそうになったが、そこにはやはり誰もいなかった。ただ、人形の無表情な目が、どこか嬉しそうに輝いているように見えた。

その夜以来、私の家には不気味な訪問者が現れることはなくなった。しかし、あの人形だけは、今もリビングの片隅に置かれており、その目は夜になると不気味に光り輝くのだった。何が起こったのかは今でもわからないが、あの夜の出来事が私の心に深い恐怖を刻み込んだのは確かだ。

ただ、、、、、


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