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王族の背信 1 -邂逅と再会-

注意:  この小説はフィクションです。実在する国や人物とは無関係です。
公開停止にならなければ15話完結の予定です。画像は拾いです。
用語:
地名:  ユニステア国ノイビラ市 本作の舞台
登場人物:
ニモニア人:
マリア・ケリー 次期国王の長女=現国王の姪
クラウス・ケリー マリアの夫
カレン・ケリー クラウスの母
コバーロ人:
ヨンス・パーク 実業家
ジェニー・リー 法律学士 
 
経済大国ユニステアの大都市ノイビラに新婚の若夫婦が降り立った。ニモニア国のクラウス・ケリーと妻マリアである。マリアはニモニア国の王女であった。ニモニア国の王室規則では直系男子しか国王になれず、また女子は結婚すると幾ばくかの支度金と引き換えに王室を離脱せねばならない。マリアは大学在学中にクラウスと知り合い、愛を育み婚約に至った。その後クラウスの母カレンの金銭問題が発覚し、結婚は延期され、クラウスはノイビラで弁護士資格を得るための留学という大義と共に逃げるようにユニステアに渡った。留学を終えあとは弁護士試験を受けるのみという状態でクラウスは帰国し、マリアと両親との確執もある中、ようやく結婚にたどり着き、マリアは愛するクラウスと共に晴れてしがらみの少ないユニステアに渡ったのである。入国後まもなくニモニア領事館主催で在留自国民やノイビラの名士を招いてのささやかな歓迎パーティーが開かれた。何しろ元王族が海外に居住した前例はなく、関係者は大いに戸惑ったが、プライバシー保護の観点と国内世論の反発を恐れて、ごく地味な催しとなったのである。参加者もどこか冷めていた。ニモニアは以前の高度成長期が嘘のような停滞期を迎えている。かつてはノイビラの不動産を購入して世界を驚かせたニモニアが今は国内の一等地を海外投資家に買収されている。国外に駐在してこの凋落ぶりを身にしみて感じている参加者には「ここで王族にコネを作って・・・」という野心を抱く余裕さえ無かったのである。
 
そんな中クラウスとマリアを鋭い視線で観察する男女がいた。コバーロ国のヨンス・パークとジェニー・リーである。コバーロは海峡を挟んでニモニアと隣接しており、良くも悪くも両国には昔から深い関係があった。民族は異なるが人種は同じである。約1500年前にある宗教がコバーロからニモニアに伝来したのを始め、ニモニア文化の多くはコバーロが起源だとも言われている。第二次世界大戦後の内戦によりコバーロの復興は遅れたものの、今では国民一人当たりのGDPはニモニアを上回り、首都にある国立大学の国際的なランク付けでもコバーロが勝っている。またコバーロのポピュラー音楽グループがユニステアのエンタメ業界を席巻するまでに活躍し認知されている。
 
ジェニーはクラウスが一人になった時を見計らって声をかけた。
「クラウス、私を覚えているかしら。」
「ジェニーじゃないか。覚えているとも。どうして君がここに。」
「フフフ、地元の名士に紹介されたのよ。あなたが王女様のフィアンセだったなんて知らなかったわ。もっとも私みたいな尻軽女に言いふらすほどあなたは馬鹿じゃないわね。」
そこへマリアがやってきた。
「クラウスのお知り合い? 紹介して下さいな。」
「コバーロ国のジェニー・リーと申します。ケリーさんとはノイビラのロースクールで知り合いました。私も弁護士試験を目指しているんです。」
マリアはジェニーの美貌に圧倒された。笑顔で話してくれるが、知的な印象は隠せない。弁護士が似合いそうだ。いやむしろファッションモデルか。並んで立つのが恥ずかしいくらい腰の位置が高い。ウエストを絞ったシンプルでタイトなドレスが胸と尻のふくらみを際立たせている。ぼーっとしつつ会話を交わしているところへヨンスが合流した。クラウスとしても初対面だ。ジェニーが紹介する。
「コバーロ国のヨンス・パークさんです。財閥家の三男坊で一族の会社で数年修業した後事業を始めて今ではノイビラでもちょっとした名士なんですよ。」
マリアはまたしても圧倒される。クラウスより5歳ほど年上だろうか。実業界で成功しているだけあって態度が自信に満ちている。いや正直に言えば筋骨たくましくしかも美男子である。ついクラウスと見比べてしまう自分にどぎまぎしてしまう。一方クラウスの内心の動揺はマリアの比ではなかった。ヨンスとジェニーとマリアの顔をせわしなく見回している。
 
ジェニーはクラウスにとって単なるロースクールの友人ではなかった。男女の関係があったのだ。そもそも母国の大学で王女と知り合う前から仲間うちでプリンスとあだ名をつけられるほど、誠実な性格に裏打ちされた人気者だったクラウスであるが、ロースクールでは勉学に追われる殺伐とした日々を送っていた。そんな時キャンパスでジェニーを見かけた。彼女はその美貌は言うに及ばず、一人でいる時、女子グループの中にいる時、男女のグループにいる時、男と1対1でいる時、常に溌溂とした自立した女性に見えた。声をかけてきたのも彼女の方だ。出会って何回目かのデートで二人はベッドを共にした。白昼カーテンも閉めないホテルの部屋で惜しげもなく裸体を見せつけたジェニーの前でクラウスは我を忘れ、前戯もそこそこにスキンを装着して挿入した。ジェニーの甘美な女性自身の締め付けと律動によりクラウスはあっけなく絶頂し、萎えた器官はすぐにジェニーの股間から絞り出される事になったのである。
「フフ、気持ち良かったみたいね。」
と言い残し、ジェニーはさっとシャワーを浴びて去ってしまった。それきりジェニーはクラウスとの連絡を絶ち、クラウスがたまらずストーカーのように待ち伏せてジェニーに縋りついた時、彼女は冷たく言い放った。
「私にはセフレはいくらでもいるの。ニモニア人のはどうかなと興味はあったけど、やっぱり短小早漏だったわね。もう私に付きまとわないでちょうだい。あと忠告しておくけど、独りよがりのセックスはだめよ。相手を喜ばすことを考えなきゃ。」
 
結局パーティーでは互いの連絡先を交換する事もなく4人は別れた。実際のところクラウスは連絡先を聞かれる事に漠然とした不安を感じていたが、ヨンスとジェニーはケリー夫妻の焦燥感の高まりを気長に待つつもりでいたのだ。夫妻が自分たちの魅力に惹きつけられたという確かな手ごたえを得られたから。その晩クラウスとマリアは肌を重ねたが、その行為はいつになくぎこちないものになった。何しろクラウスはジェニーの裸身を思い出しつつ、マリアはヨンスの裸身を想像しつつの行為だったのだから。

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