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甘みから逃げたい(筋斗雲で)

風邪の治りかけ、どうも空咳だけがちょっと残る…ってときがありますよね。
そういうとき、わたしには決まって薬箱から取り出すものがあります。

龍角散。

それは、銀色の容器いっぱいに入った白い粉であり、付属のちっちゃいスプーンで山盛り1杯、すくって舌の上に乗せ、ゆっくりと溶かすことで喉の繊毛を直接整わせることのできる漢方です。

服用するのに水は要らない。
要るのは、この細かすぎるが故に机の上や唇やTシャツの胸なんかに落としてしまいやすい粉々を、可能な限り溢さずに口の中に入れる技術力と、集中力。

うまく飲めればたちどころにすーっと喉が楽になり、空咳のおさまるこの薬を、苦いとも辛いとも言えない、ただ「龍角散の味」としか形容出来ないこの味わいを、わたしは幼き頃から愛してやみません。

しかしこの龍角散、難点があって、それはお出かけの際にお外で服用しにくいこと。
例えばおしゃれカフェに漢方の香りはそぐわないし、おしゃれカウンターに粉を溢し汚してしまう恐れもあるからです。

まして、龍角散を歩きながら服用するなんてことは決して出来ません。
風の中で口に入れようとなどしたら、龍角散は虚しくも残らず吹き飛んでいってしまうことでしょう。

そんなときに便利なのが、1回分使い切りタイプの龍角散ダイレクト。
一般的な粉薬のように小袋をピリッと破ってサッと口に入れられるからとっても便利!と、思いきや…

龍角散ダイレクトには、ミント味とピーチ味の2種類しかないのです。
ミント味と、ピーチ味。

そう、甘み。

便利になったら急に、わたしと龍角散の間に甘みという恋敵が出現するのです。なぜ。なぜなの。なんで龍角散に甘みをつけたの。ようやくお外で安全に龍角散が服用できると安心した矢先にこの仕打ち。
ミント味でもピーチ味でもない、龍角散味がわたしは好きなのに。あなただけが好きだったのに。
龍角散ののどすっきり飴も甘い。龍角散ののどすっきりタブレットも甘い。龍角散ダイレクトトローチはマンゴー味。マンゴー一択。え、マンゴー?何故マンゴー?…とにかく甘い。

甘みめ。
甘み。甘みなんか要らないのに。
わたしと龍角散の間に甘みなんて要らないのに。

わたしは、甘みから逃げたいのです。

ちょっと口の中をさっぱりさせたいときに取り出すミントタブレットもそうです。

スーっとするのはいいけれど、あれも甘い。
シュガーレスを謳ったものも、砂糖が合成甘味料に代わっただけで結局甘い。

甘みめ。
甘み。甘みなんか要らないのに。
わたしとミントの間に甘みなんて要らないのに。

でも、ミントタブレットの甘み抜き、しかもいつでもどこでも口に入れられる便利アイテムは、既に手中にあります。

ハッカ脳です。

わたしはこれを常に持ち歩き、そのままひとすじ、口に入れて舐めています。
ハッカ脳に甘みはありません。そこにあるのは、ただ、ミント。甘み抜きで直にミントと向き合うことが出来るのです。

わたしは、出来ることなら龍角散とも甘み抜きで向き合いたい。いつでもどこでも。
龍角散ダイレクト(龍角散味)が欲しい。

なぜわたしたちの間に余計な甘みを挟もうとするのか、株式会社龍角散に問い正したい(龍角散って株式会社龍角散が作ってるんですね)。

わたしは甘みから逃げたい。
ただし、筋斗雲で。

なぜ筋斗雲かというと、逃げて、逃げて、逃げ疲れたら戻ってきてチョコとかパフェとか食べたくなることもあるからです。

こんなに甘みを嫌っておきながら、たまには甘いものも食べたい。
人間って、多面的ですね。

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