話の遺産「固い」
前回「鎌倉」で話たのですが、鎌倉のホットケーキ屋を紹介してくれた方の続きの話です。
お店を紹介できるほどの食通?でいらっしゃいました。当然、作るのも好きな方でした。
老人ホームで経営しているデイサービスを街中で新しい事業所を作ることになりまして、
そこの2代目の責任者にその方がなりました。
新しく責任者になったこの方は、新しい事を考えます。
それは食事やデザートを充実させたいという事でした。
その中で、まず考えたのが、おやつのパンでした。パンを手作りにしたい。パン焼き器に頼る事なく、最初から手作りで作りたい。そんな信念がありました。
街中の施設の報告は毎回、戻ってきて全体会議で聞くことになっており、毎回、意気揚々と話されていました。
ある日、僕に「余ったから食べて良いよ。」と3個のパンをもらいました。「わかりました後で食べます。」と言って頂きました。
ちょうど宿直だったので、食後に食べることにしました。コーヒーを入れ、早速食べようとすると…
固い。若い僕が食べられないと言うことは。お年寄りも当然食べられない。まぁ、とりあえず、工夫してなんとか食べました。
翌日
「どうだった?」と聞いてきますので、
「しばらく時間が経っちゃったから、固くなっちゃってたよ。牛乳で柔らかくしたけど美味しかったよ。」と言いました。
「早く食べないとダメだよ。」と笑っていました。
しかし、職員に聞いてみると。提供するパンが毎回固いというのです。
理由を聞くと、お年寄りのことを考え、パンに入れる塩と砂糖の量を少なくしているというのです。それは固くなるのは当たり前です。
それからもパンをもらいました。毎回一緒なので、牛乳に浸して毎回食べていました。
さらに、クリスマスにケーキを作りました。他の場所からも依頼があり、クリスマスは5個くらいケーキを作るそうです。
当日、こっちにもケーキの差し入れがありました。見た目は美味しそうですけど…
そうなんです。スポンジが固いのです。みんなお腹が一杯と言うことで小さくして食べていました。
私のところには半円の大きさのケーキが置いてありました。
「食べてくれよ。美味しいから」と言ってくれました。
とりあえず、苺と生クリームを食べて凌ごうとしましたが
「スポンジも美味しいよ。」と言います。スポンジを食べますが…固いんです。レンガを食べてる感じでしょうか。
「残りはうちで食べます。」
適当なことを言って、難を逃れました。本当にうちに持ち帰り、家族に食べてもらうと。
「これはケーキじゃない」と言われました。
ケーキは苺と生クリームを食べて、スポンジは捨てました。非常に罪が重いです。
パン作りも終わることになります。
みんなに渡していたパンが職場のゴミ箱に捨てられるのを見つけてしまったんです。
僕に
「まずかったんだね。もう二度と作らない」と言いましたが、僕は
「パンやケーキは分量を守らないと固くなっちゃうから、守ったほうが良いですよ。」と言ったら
「お年寄りの体によくないよ」と言いました。
こんなに固くなるのは、砂糖や塩の入れ過ぎだと、お年寄りの体に良くないからの様です。
お年寄りも残していた様です。
私は今デイサービスで、おやつを作りますが、この教訓から分量に沿って作る様にしています。
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