第9話 家族と親友
「ただいま!」
舞美は家を開けるなり大きな声で言った。
「あら、おかえりなさい。今日は部活がないのね」
「そそ!今日は部活の顧問が休みだったから☆
でも今から依頼絵を完成させないと!」
「この前話していた子?」
「そうそうあの子!
あたしの配信を聞いて歌い手になりたいって言ってくれて、それで立ち絵とかをあたしが描くことになったんだ!」
「そうなのね。舞美ちゃんはすごいのね。
今日は近くでパン祭りをしていたから、メロンパンを買ってきたわよ。休憩時間にでも食べてちょうだい。」
「ほんと!?ありがとう叔母さん!!」
家に帰り、舞美はいつも通り叔母と話していた。
舞美の両親は舞美が小学3年生の時に亡くなった。両親どちらも周りから愛されていたので、葬儀ではたくさんの人が涙を流していたのを覚えている。
叔父と叔母は子どもができなくて悩んでいたらしく両親を失った舞美に対してすごく優しくしてくれたし、両親と同じく舞美という1人の人間を認めてくれている。
叔母はれいどろをはじめとして、イラストレーターとしてたまに仕事を引き受けていることを知っている。
完璧に理解しているわけではないものの“知らないから”と無関心でいるのではなく、舞美と一緒に調べてくれたり変な偏見を持たずに舞美の夢を応援してくれる。
だから舞美はのびのびと活動できているのだ。
叔父叔母は理解ある人で助かったが、唯花や咲南花のような親が厳しい人
さらに言うと子に対して過干渉な親は大変だと思った。
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『昨日は遅くまでお疲れ様!
配信を聞いてくれるだけでなくイラストまで描いてくれてありがとう✨』
『それでお仕事の話になるんだけど、“白髪”と一言でいってもいろんな種類があるから、よく分からなくて……(汗)』
『もっと言うと真っ白なのかパステルカラーなのか…とか、たくさん種類があるからもう少し詳しく教えてくれるとうれしい!!
あかねちゃんの期待に添えるように、今がんばってるところだから!』
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さっき連絡していたのは、叔母との会話にも出てきた舞美のファンの子。
五十嵐 緋音(いがらし あかね)という子で、“あかね”として活動する予定らしい。
緋音はSNSを最近始めた初心者で、1番最初にDMをくれた時に本名を名乗ったことには驚いた。
そこから舞美と緋音は仲良くなった。
ネット初心者である緋音に、舞美がネットについていろいろ教えていたところ緋音の立ち絵を舞美が描くことになったのだ。
昨日、公式配信が終わった後に2人は連絡を取り合って順調に“あかね”のデビューに向けて準備している。