「本当にやりたいこと」の話

「本当にやりたいこと」がない、という話をたまに聞く。将来に向けてなにをやっていこうか、自分がどうしていきたいのか考えていくと、この壁に当たることはよくある。特に、近くに輝かしい業績や素晴らしい作品を世に出している人たちがいると、「そういう人たちはきっとずっとそういうことを考えてやってきているんだろうなぁ」という気持ちになって、自分と比較してしまうことがある。私も似たことを考えたことはよくある。

数十年という短い時間の中、かつ現状の結論ではあるが、自分は「本当にやりたいこと」がないのは、それほど問題にはならないのではないかと考えている。むしろ、「本当にやりたいこと」というのは常に探し続けていくものではないか、と思っている。ソフトウェアエンジニアの文脈で時折登場する、「本当の要求は顧客さえしらない」というものが、そう考える理由である。

常に探し続けるためにどうするか、それは「手頃にあるやりたいと少しでも思えるものをやっていくこと」ではないかと思う。手頃にあるものをやってみることで、新しい視点が手に入る。その視点をもとにして、また手頃にあるものを探してみる。そうした繰り返しのなかで、「自分はこういうことがやりたい・やりたくない」「自分はこういうことを大切にしている」の輪郭が少しずつ鮮明になる。そこで自分の中にある「本当にやりたいこと」と、自分が認識している「やりたいこと」の距離が少しずつ縮まってくるのではないだろうか。

どのぐらいのスピードでその距離が縮まるのか、それは個人差が大きくなるところだろう。最初からズレが少ない人、現状を把握するのがうまい人、目標との差異を見るのが上手い人、ズレの修正が上手い人、試すスピードが早い人。いずれにしても、(大きなリスクがないという条件はつくが、)なんでも試してやってみる、というのは大事かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?