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『熱源』 川越 宗一 著

STORY
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされら経験を持つ二人が、サハリンで出会い、自らが守り継ぎたいものの正体にたどり着く。

audibleより

戦争の戦闘ではない側面の物語。
そこには物語になることで見えてくる悲惨な現状がある。

アイヌの人たちが戦争に巻き込まれ、日本人になるかロシア人になるか迫られるところから物語は始まる。

日本人として生きようと必死に生きるが結局日本人はアイヌを日本人とは認めず虐めたり、迫害する。

同時にアイヌを助けるためにワクチンの接種を促すがアイヌは怖がり接種率は上がらない。

文明の格差で必要なこと(病気や薬の必要性)が伝わらなかったり、文明を押し付けて必要ないことを強いることもある。
本当に何が大切なのか。


滅びつつある文化。滅ぼさまいと奮闘するアイヌ。抗えない時代の波。

本文にも出てくるが、アイヌではあってはいけないという観念によってアイヌが滅びるのではないか?
これには驚いたが、核心をついていると感じた。


自分のアイデンティティを考えなくても生きてこれた自分にとって、いかに恵まれているのか。いかに無知なのかを思い知らされた。

軽い重圧によろめき、些細な理不尽に激怒し、簡単なことでもしりごみをする自分を反省したい。

戦争の戦闘ではない部分を見てもやはり戦争の恐ろしさ、理不尽さ、がやるせない気分にさせる。これに気づかせてもらえる本。

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