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『正欲』 朝井 リュウ 著

ストーリー
息子が不登校になった検事・哲喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。
しかしその繋がりは、“多様性を尊重する時代“にとって、ひどく不都合なものだった。
「自分が想像できる“多様性“だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」

amazonより

マイノリティで集まれる人たちはマイノリティの中のマジョリティってワードにハッとさせられる。
本当に理解されることのないマイノリティはやはり排除される現実がそこにあるんだなと気付かされた。
多様性を本当の意味で認め合えることの難しさが描かれている。

理解されない人の諦めや苦悩、理解しない人の理解力の無さや難しさ。
確かにマイノリティの中のマジョリティになれる世界になったのは前進とも言えるが根本的な解決とは違う方向に向いていってる気もする。

この小説は性欲にフォーカスして描かれているが、それだけにとどまらず色々な物事にもあると思う。
いろんな差別は存在するし、認め合えていないこともたくさんある。
どうしようもない国籍の差別や宗教間での争いも終わりがない。

お互いがお互いの状況や境遇を確かめ合うことでなら少し理解し合えるのではないかと思う。
そのためにもこういう小説が役に立つのではないかと感じた。

マイノリティ振る人や理解しているような顔をしている人とは全然違う本当のマイノリティの視点で描かれていると思える。多様性、アイデンティティ、マイノリティを考えさせられる小説。

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