庶民体験

私は高校2年生。キラキラしているJKに憧れてこの私立高校を受験した。この学校は学力や常識が無くても、お金さえあれば誰でも入学できる、いわゆる『お嬢様学校』だ。

親が一流企業の社長やお医者さん、ポルシェやフェラーリでの送迎登校が当たり前、カップラーメンって何?GUって?マクドナルドって?

庶民と生活が異なる生徒ばかりだ。

生徒達は小さい頃からブランドものしか身に付けたことがなく、庶民の生活なんて知らない。もちろんだがお金に困ったことは無い。欲しいものがあればなんでも手に入る生活に慣れており、買い物で値段など気にしたことがなかった。

このお嬢様学校では今年から校長先生が変わり、学校の教育方針がガラッと変わった。生徒にお金の大切さをしってもらおうという考えだ。しかし、元々居た先生方はこの教育方針は無駄だと思った。なぜなら、この学校の生徒達は親のお金だけで生活していて、社会に出てアルバイトをした人など1人も居ないからだ。そんな生徒達が世間一般のお金の基準は分かりやしないだろう。だから権力のある校長先生が発しても、誰も生徒は聞いてくれないと思った。

校長先生の、社会に出て働く事の大変さ、お金の大切さについて知ってもらいたい!という生徒への気持ちは強く、すぐ行動に移した。全校集会で『庶民体験』という名のアイテムを紹介した。一見、バカにしているようにも思える。このアイテムは小さいもので、この部品を自分の持っているお財布に付けるだけでどのくらいの時間働いたらこの商品を買うことが出来るのか、世間一般のお金の価値を教えてくれる、その名の通りのアイテムだ。

どうせこんなもの渡してもまともに付けてくれる人なんていないだろう。。先生方はそう思った。

普段はぼーっとしていたり、眠っていたり、ザワザワして話している生徒たち。全校集会でまともに先生の話を聞いている人を見たことがないと言う。しかし、今日の全校集会ではほとんどの生徒の顔が良く見える。意外にも校長先生の話を真剣に聞いてくれていたのだ。好奇心旺盛な生徒が多いことは先生方も分かっていたが、驚いた。

「なにそれー!」「面白そうじゃん」「校長先生やるじゃ〜ん」など、興味を持ってくれている生徒ばかりだった。そして実際にほとんどの生徒がこのアイテムをつけてくれたのだ。初めはこんなに働かなきゃ買えないの!?と、驚く生徒ばかりだった。実際には働いていないが社会で働くことの厳しさ、両親がどれだけ頑張ってくれているかを理解してくれたと思い、校長先生や先生方は嬉しかった。

この『庶民体験』を使い続けるうちに、生徒達は浪費癖が減り、校長先生の思うつぼだった。このまま社会に出ても一般人と同じくらいの消費生活を送ってくれるに違いない、校長先生はそう思っていた。

だが生徒達は異常にお金に執着するようになってしまった。

親の収入がなくなったら…
将来結婚できなかったら…。

世間の常識も知らずに、親のお金で何不自由ない生活を送ってきた生徒たち。自分が社会に出ても親の様に稼ぐことは出来ない。稼いだとしても今までの生活とは違い、庶民と同じ生活になる。その事実に恐怖を感じ、将来のためにお金を貯め、節約するようになった。だが彼女たちは節約の限度を知らなかった。

生徒達は苦労や挫折を経験したことがないため、苦しいことから逃げた。そして他人に頼るようになった。

他人を騙して大金を手に入れたり、「とにかく楽に、楽に」という考えで生活していったのだ。

お金持ちの家庭で育ったお嬢様達が『庶民体験』という校長先生発案のお財布を利用することで働くことの大変さを理解してくれたのは事実だが、まともな教育を受けたことが無かったため、自分で働くことのイメージがつかず、結局庶民とは違う、ずる賢い方法で一生を過ごすことになってしまった。

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