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没月

ボーリング、好きやったんやな。
意外な感じ。
楽しみだ。ボーリングデートだ。

Sは早々に、一番軽いボールを抱えて、俺を、見ている。

俺は、入念に、ボールを選ぶ。
重さも重要だし、指を入れる穴の間隔も重要だ。
完璧なボールを二つ、欲しかった。
ボールは、重量ごとに、各棚に並んでいる。
しかし、一つの棚の中で、手の小さい人用から手の大きい人用へと、穴の間隔の広さは、順番になっていない。

穴には無関心なのだと分かる。
いちいち、ボールを手に取って穴の配置を確認しないといけない。

待たれていたので、穴のフィット感が適当なボールを三つ、持って行くことにする。

右手と左手にボールを一つずつ持ち、その間にひとつボールを挟み込むようにして持ち上げようとする。
持ち上げようとしたボールが、滑り落ちた。


ボーリングゲーム開始だ。
Sは、座席に、座って居る。
俺は、意気揚々。座席から、ボール置き場へ、行こうと、する。



「本当に、ボーリングなんて、すると思った?」



Sは俺にキスをする。
唾液の多いキスだ。
俺が唾液の多いキスが好きだということをSが知っていることが分かられる。
(騙したな。)
憎しみを感じるべきだ、と思う。

Sに期待していた。
「こういうのって男の夢でしょ。」
完璧な乳房が顔面に押し付けられる。
それは、硬かった。
硬いおっぱいが好きだったんだ、と分かる。

向かいの人たち、俺らのこと変やと思ってへんかな。


「どうでもいいと思うけどさ、福岡まで、行ってきた。
それで、わたし、どこにも、行くところがないということが分かった。」

抗うべき快感に抗い難い。
キスは止めどなく与えられ、乳房が。

Sの顔と自分の顔の間に手を挟み込み、壁を作る。
しかし、快感は続く。わかっていた。


おれはボーリングを楽しみにしていた!
恥ずかしいと分かり始めてきた。

幼児のようにボーリングを楽しみにしていた。
Sはボーリングなんてするはずがない。

そう、するはずがない。
気付いていた。

騙していたのは俺だ。

「てか、なんでボーリング?」


「さっきさ、淀屋橋の人とエッチしてきた。気持ちよかったし、かっこよかった。」

なぜ俺に言う。
なぜ俺とはしない。

なにか、忘れている、と分かる。

女の首を絞めていると、顔が赤くなっていた。
裏側の座席の人たち、俺らのこと変に思ってへんかな。

選ばれた俺は、女が求める程度に首を絞める。

なにか、忘れてんな。

「ホテル、近くに無かったよな。行くならタクシーでか。」

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