羽
城下町。夜、限りなく暗い時刻。
忍者は右腕から鎖を、射出し、城の屋上の瓦屋根に掛け、引き戻す力で屋上へ、飛び乗る。
素早く、隠密な移動。
城は富豪の城だ。どの建物よりも高く、そこを中心として、街が成る。大富豪だ。
城の屋根は扁平である。私は四つん這いになり、屋根に顔を近づける。
四つん這いになっている部分が、透明なガラスに変わる。
私は覗く。
部屋一面に、真っ白な布団が、整然と、敷き詰められている。部屋全てを一望できつつ、果ては無い。
各布団に、所定の男女が一組ずつ、配置され、本能的な性交をしている。
おのおのが伸びやかに、既知の性交を、リプレイしていた。
布団からは、はみ出ない。出てはならないというルールはない。
私は綿密に見る。
私はここに、行けなかった。仰向けに寝た女の目が、私の右目を見た。
女は、俺の全てを、見た。見られた。
女は発狂した。躊躇なく、部屋全体が一斉に狂いだす。
警報ベルが鳴る、街が起きる。
現実に、武装された男衆が迫るとわかる。
逃げなければ殺される。
背中には河。幅が広く、あちら側は見えない。アメリカを想起させる河。
橋がかかっている。
私の羽は、蝙蝠の羽だ。羽ばたける限度はたった、五回。それはルール。
男衆が迫ってきている。もう、行くしかない。
河の奥には大陸があるのがわかる。
橋沿いに飛べば、五回の羽ばたきで、向こうまでたどり着けなくても、橋に不時着できる。
男衆に捕まるが、水死はしない。
死を覚悟し飛ぶ。瞬間、羽が、白くふわふわとした、輝く羽に変わる。
天使の羽だ!
とてつもない上昇気流を捕らえる。空高く舞い上がる。光に包まれる。
橋が太くなるとわかられる。
高層ビル群が見える。あれは…美国?
鷲が、獲物を、見た。
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