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【内観予定】昔の恋の物語+No.ツー

前回
そんな矢先友人が、「彼の事を何年も好きな後輩がいるみたいよ」泰子はまたもや顔面蒼白になった。しかし、彼が決める事、私にはどうする事も出来ない。そう思いながらも、心の中で「こうなったら押し倒すしかないか!?」と良からぬことも考えていた。そんな冗談とも思えないような事を考えていた数日後、友人からの電話が鳴った。「例の後輩ちゃん。ジサツミスイしたらしいよ」

泰子はびびりまくって手も足も震えていた。
「相手の親がね、彼に交際してくれるよう頼みに来たらしいよ。それでね…その…」
もう、嫌な予感しか働かない。
「付き合う事になったって…」
やっぱり。。。友人が気を使って飲みに誘ってくれたが、それどころではなかった。今度こそ完全に私の恋が終わった。

数日して、彼から電話がきた。
友人達にせっつかれ電話をしてきたそうだ。

この時何を話したのかあまり覚えていない。そこまでする相手に白旗をあげるしかなかった事、本当は私と付き合うつもりでいてくれた事だけは、忘れられないでいる。少しでも好意を持ってくれていた事を泰子は信じたかった。何日も何日も泣き続け、水分は全て涙で使い切ってしまったくらいだった。この世から去ってしまいたい衝動にかられ、辛い日々を送っていた。

でも、どうしても会いたくて、どうしても話がしたくて思い切って電話をした。新しい恋人に申し訳なかったけど、気持ちを抑える事が出来なかった。これが最後になるんだろうなぁ。泰子は覚悟をしていた。待ちわせは真夜中、2時間かけて海までドライブをした。
「なんて言おう…」
まだ泰子の気持ちは揺らいでいた。

核心的な話しが出来ないまま朝を迎えた。

泰子は最後に愛の告白をする決心をした。思えば真剣に気持ちを伝えていなかった。その事を後悔していたのだ。付き合おうといつか言ってくれると、勝手に思っていたから。

「私、忘れることにする」
泰子は自分で「えっ!?」と思った。
思い掛けない言葉が口から飛び出したからだ。
彼はこっちに身体を向きかえこう言った。
「忘れられるの?」
泰子は更に「えっ!?」と思った。
しばらく無言が続いた。忘れられるの?ってどういう意味なの?好きでいていいの?もう望みもないのに?
「うん。忘れられる。大丈夫」
「本当に?本当に大丈夫?」
「…うん」
人は時に、頭と口がチグハグになる時がある。結局、最後まで好きだと好きだったと伝える事が出来なかった。忘れられるのって?本当にって?どんな気持ちで言ってるの?最後の最後、本当に終わりの時なのに泰子はチキってしまい、本心を告げる事も疑問を問う事も出来なかった。

最寄りの駅から、放心状態で歩いて帰った。我ながら本当に情けなかった。「今日もバイトだ…」ほとんど寝ずにバイトに行った。どのように過ごしたのか覚えていない。

その頃、別の男性から交際を申し込まれていたが、全く興味が湧かなかったし、何の慰めにもならなかった。友人が気を使って、飲み会に誘ってくれた。本当に沢山の飲み会に参加したが、誰とどこで飲んだとか全然覚えていない。辛い日々を送っていたが、あれから彼に連絡を取ることはしなかった。忘れる努力をしている途中だったから。

それからどれ程たっただろうか。悲しみも少しづつ癒され始めた頃、いつものようにアルバイトに行った時の事だ。
カウンターとちょこっとの席しかない飲食店。休憩から戻ると、そこに女子高生らしき制服を着たちっちゃな3人組が座っていた。泰子は幼い頃から、凄い勘の持ち主だった。そんなのよくある光景なのに、その時もしっかり心がざわついた。
「げっ…まさか…」悪い予感は見事に的中した。
「あの…泰子さんは今日いらっしゃいますか?」


No.スリーに続く。
あ…また【内観】まで行き着かなかった

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