【毎週ショートショートnote】 チクタク水平さん

「そう、そう。わかったわ。ありがとね」

水平(みずだいら)さんの電話が終わったときを見はからって、僕は声をかけた。

「どうでした?」

水平さんは、苦い顔で僕の質問に答える。

「林檎様は、あの犬っころと、おつきあいされるそうよ」

目の前が真っ暗になった。

嘘だろ。

あんなやつと。

なんで。

なんでだ。

「しゃんとなさい」

頬に痛みが、はしる。

水平さんに、ビンタされたのだと、わかった。

「すみません。あまりにショックで」
「そうね。私もそうだわ」

水平さんは、堂々として、凛としていて。
まったく動揺していないようだけど。

「これからが、大変ね。『白雪王子倶楽部』をつづけるかどうか…。部員数が減ってしまうわ。いや、それよりも。あの犬っころが、林檎様をふるようなことがあれば、制裁をしなければ。ふった直後に討たなければ…」

犬っころ制裁のカウントダウンが、始まった。

「これから、どうします」
「そうね。まずは、犬っころを見定めなければ」

水平さん、怖えぇ…。