【毎週ショートショートnote】半分ろうそく


誕生日には嫌な思い出しかない。
ケーキを買って、ろうそくをたてたことがない。
もう高校生だから、こだわらなくていいのかもしれないけれど。
あこがれるのは、あこがれる。

「林檎ちゃん。お誕生日おめでとー」
「知ってたんだ。ありがとう」

クラスメートの女の子たちから、プレゼントをいっぱいもらう。
友達にはめぐまれているので、プレゼントへのあこがれはない。
ケーキがほしいけど、そこまで望むのは贅沢だろう。


「今日、林檎ちゃん誕生日なの?」
「おう、そだけど」
「なんで言わないのさー!」
「聞かれなかったし」

鎌犬が勝手にショックを受けていた。
財布をひっくり返して、うんうんうなっている。

「プレゼント、ケーキでもいい?」

よりによって、そのチョイス。

「なんでケーキ?」
「僕も食べたいから。あと、ろうそく買うお金も残しておきたい。コンビニで買うから」

コンビニにあるろうそくはデカいから、私の年齢ぶんたてると半分ろうそくじゃないだろうか。
でも、うれしい。