【毎週ショートショートnote】メガネ朝帰り
「ああ、いいメガネだった…!」
「馬鹿が」
俺は相方と眼鏡屋をあとにした。
なんとまあ、徹夜明けだ。
トランプのページワンだけで、ここまで遊べるのは俺と相方ぐらいだろう。
「今日は、その眼鏡を一日かけたままな」
俺は舌打ちする。
あんだけ俺でメガネファッションショーをしたというのに、まだメガネを見足りないというのか。
「生粋のメガネ狂いだよな、てめえは」
「まあね。俺は視力がいいから、見る専になったけど」
「俺も視力いいんだが」
「その眼鏡は度なしだから大丈夫」
なにもかも大丈夫ではない。
倉庫に乱雑に置かれている場所からひっぱってきたメガネだから、盗難届は出ないだろうが、それでも俺のポリシーには反する。
「食いもん以外、はじめて持ち出したな」
「え、これがはじめてじゃないけど」
「は?」
「俺、ティッシュとか、タオルとか、持ってくよ?」
俺の知らぬ間に、なんてことをしてくれたのだ、こいつは!
すかさず、蹴りを相方にいれようとするが、避けられた。